二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
涼にとって、香澄との出会いは天がくれた奇跡だとすら思っている。神なんか信じたこともなかったのに。
身体の相性も完璧。心身共に溶け合いたいと思ったのは香澄だけ。
そんな出会いを失敗だと言われた気がした。
「君は、僕が香澄を抱いたことを失敗だって言いたいのか?」
「それは私の失敗よ。残念ながら認めるしかないわね」
あっさりと、涼の言葉を拓人は否定した。
「まさか……あんたの失敗を、大声で言わせる気?」
そう言うと、拓人は涼のあそこ目がけて蹴りを入れてきた。10cmのピンヒールのまま。
もちろん、涼はそんな蹴りを避けられないほど運動音痴ではないので、すぐに避けることができたのだが。
「ちっ、ちょこまか動きやがって。これ以上あんたの下半身の犠牲者を増やさないように、ソレ、再起不能にしてやろうと思ったのに」
「子供でも、君の蹴りよりはもっと速いと思うけど」
「うるさいわね。大人しく蹴られなさい」
そう言うと、拓人は「上がるわよ」と言いながら、ピンヒールを丁寧に脱いで揃えた。ついでに香澄の靴らしきものだけをピックアップして、靴箱に収納した。
「あんたはね、香澄にとって取り返しのつかない傷を負わせることになるのよ」
「傷?」
「そう、一生消せないかもしれない傷、をね」
拓人は「どきなさいよ」と涼をスーツケースで突き飛ばしながら、中に入っていく。
「リビングは……こっちね」
「拓人、待て」
涼もリビングの中に入ったところで、拓人に尋ねた。
拓人は周囲を見渡しながら、ちょうどよさそうな場所にスーツケースを置いた。
「僕が傷を負わせるって、どう言う意味だ」
まだ、過去形ならわかる。よく行為をした女性を傷物という表現をするから、そう言うニュアンスであれば傷をつけた、は正しいかもしれない。
だが、涼の目の前にいる男は曲がりなりにも言葉のプロだ。そんな男が、わざわざ現在形を使うだろうか。
「答えろ、拓人」
涼は、スーツケースの中身を広げようとしていた拓人の腕を無理やり掴み、自分の方に振り向かせた。
拓人は、涼に吹きかけるようにため息をついた。
「…………そんなこと知って、どうするの?」
「決まってるだろ。僕は香澄の子供の父親なんだぞ。香澄を生涯守るために決まってる」
「それがバカだって言ってんのよ!!」
拓人の目には怒りが宿っていた。
「ベッドの上での会話がどうだったかとか、そんなことはどうでもいいのよ。でもね、兄貴。本当にあんたが香澄を大事に思っていたなら、香澄に妊娠しちゃいけない、何か特別な事情があるかもしれないって考えて、紳士的な態度くらい取れるでしょう」
「妊娠してはいけない……事情?」
確かに、俺は欲望のまま香澄を抱いて、何度も吐き出した。まるで動物のように。
そして香澄もまた、僕を求めた。もっとと繰り返した。
だから、同じ気持ちだと思っていたんだ。
でも、ここでふと涼は思い出した。次の朝のことを。
(本当に同じ気持ちだったら、僕から逃げ出したりしない……)
拓人は、涼を睨んだまま、こう言葉を繋げた。
「ただ、肉欲に負けるだけは本当の愛じゃない。あんたは確かに香澄の身体には惹かれたかもしれない。でもね……本当に愛しているというのなら……香澄の心も、背景も全部ひっくるめて受け入れて行動するべきだったのよ。あんたはそれをしなかった。もしそれさえしてくれていたら……香澄を妊娠させては絶対にいけなかったことくらい分かったでしょうに」
涼は、拓人がどうしてここまで香澄の妊娠に否定的なのか理解できなかった。
ただ、涼の子供を妊娠したから……というわけではなさそうだった。
「お前……香澄の何を知ってるんだ?」
涼は問いかける。
いつもの茶化すような問いではない。
本当に知りたかったのだ。
拓人が知っていて、涼が知らない香澄の姿を。
「話したら、今度こそ香澄の前から消えてくれる?」
「それは約束できない。絶対」
「何でよ」
「僕は、香澄の夫になるために生まれてきたから」
「本当におめでたいわね……」
そう言うと、拓人はちらりと目線を横にずらした。仏壇があった。
「香澄の家族の前で、はっきりさせてあげるわ。あんたは、本当の意味で香澄にふさわしくないってね」
→7.予想外に深すぎた彼女の心の傷 に続く……
身体の相性も完璧。心身共に溶け合いたいと思ったのは香澄だけ。
そんな出会いを失敗だと言われた気がした。
「君は、僕が香澄を抱いたことを失敗だって言いたいのか?」
「それは私の失敗よ。残念ながら認めるしかないわね」
あっさりと、涼の言葉を拓人は否定した。
「まさか……あんたの失敗を、大声で言わせる気?」
そう言うと、拓人は涼のあそこ目がけて蹴りを入れてきた。10cmのピンヒールのまま。
もちろん、涼はそんな蹴りを避けられないほど運動音痴ではないので、すぐに避けることができたのだが。
「ちっ、ちょこまか動きやがって。これ以上あんたの下半身の犠牲者を増やさないように、ソレ、再起不能にしてやろうと思ったのに」
「子供でも、君の蹴りよりはもっと速いと思うけど」
「うるさいわね。大人しく蹴られなさい」
そう言うと、拓人は「上がるわよ」と言いながら、ピンヒールを丁寧に脱いで揃えた。ついでに香澄の靴らしきものだけをピックアップして、靴箱に収納した。
「あんたはね、香澄にとって取り返しのつかない傷を負わせることになるのよ」
「傷?」
「そう、一生消せないかもしれない傷、をね」
拓人は「どきなさいよ」と涼をスーツケースで突き飛ばしながら、中に入っていく。
「リビングは……こっちね」
「拓人、待て」
涼もリビングの中に入ったところで、拓人に尋ねた。
拓人は周囲を見渡しながら、ちょうどよさそうな場所にスーツケースを置いた。
「僕が傷を負わせるって、どう言う意味だ」
まだ、過去形ならわかる。よく行為をした女性を傷物という表現をするから、そう言うニュアンスであれば傷をつけた、は正しいかもしれない。
だが、涼の目の前にいる男は曲がりなりにも言葉のプロだ。そんな男が、わざわざ現在形を使うだろうか。
「答えろ、拓人」
涼は、スーツケースの中身を広げようとしていた拓人の腕を無理やり掴み、自分の方に振り向かせた。
拓人は、涼に吹きかけるようにため息をついた。
「…………そんなこと知って、どうするの?」
「決まってるだろ。僕は香澄の子供の父親なんだぞ。香澄を生涯守るために決まってる」
「それがバカだって言ってんのよ!!」
拓人の目には怒りが宿っていた。
「ベッドの上での会話がどうだったかとか、そんなことはどうでもいいのよ。でもね、兄貴。本当にあんたが香澄を大事に思っていたなら、香澄に妊娠しちゃいけない、何か特別な事情があるかもしれないって考えて、紳士的な態度くらい取れるでしょう」
「妊娠してはいけない……事情?」
確かに、俺は欲望のまま香澄を抱いて、何度も吐き出した。まるで動物のように。
そして香澄もまた、僕を求めた。もっとと繰り返した。
だから、同じ気持ちだと思っていたんだ。
でも、ここでふと涼は思い出した。次の朝のことを。
(本当に同じ気持ちだったら、僕から逃げ出したりしない……)
拓人は、涼を睨んだまま、こう言葉を繋げた。
「ただ、肉欲に負けるだけは本当の愛じゃない。あんたは確かに香澄の身体には惹かれたかもしれない。でもね……本当に愛しているというのなら……香澄の心も、背景も全部ひっくるめて受け入れて行動するべきだったのよ。あんたはそれをしなかった。もしそれさえしてくれていたら……香澄を妊娠させては絶対にいけなかったことくらい分かったでしょうに」
涼は、拓人がどうしてここまで香澄の妊娠に否定的なのか理解できなかった。
ただ、涼の子供を妊娠したから……というわけではなさそうだった。
「お前……香澄の何を知ってるんだ?」
涼は問いかける。
いつもの茶化すような問いではない。
本当に知りたかったのだ。
拓人が知っていて、涼が知らない香澄の姿を。
「話したら、今度こそ香澄の前から消えてくれる?」
「それは約束できない。絶対」
「何でよ」
「僕は、香澄の夫になるために生まれてきたから」
「本当におめでたいわね……」
そう言うと、拓人はちらりと目線を横にずらした。仏壇があった。
「香澄の家族の前で、はっきりさせてあげるわ。あんたは、本当の意味で香澄にふさわしくないってね」
→7.予想外に深すぎた彼女の心の傷 に続く……