二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
再びやってきた、涼先生のオフィス。
そこには、香澄にとって想定外の人物が勢揃いしていた。
「なんで……お母さん……」
バレンタインの日と同じように、香澄の母親は事務所のふかふかソファーに堂々と座っていた。
あの日と違うのは2点。
1つは、母親の機嫌。バレンタインの日は、顔を見るのも嫌になるくらいご機嫌だったのに、今は誰が見ても苛立っているということがよくわかる表情をしている。貧乏ゆすりもしていた。
そしてもう1つは、母親以外に2人、母親の反対側のソファに座っていたこと。
1人は60代くらいの、白髪まじりの髪とし●むらで売ってそうなワンピースに身を包んだ細い女性。もう1人はメガネにぽっちゃり体型、少しだけぴちぴちのスーツを着た30代くらいの男性だった。
(この2人……目元がよく似ていな……)
香澄はいつもの人間観察の癖を無意識に発揮しながらも、この状況の意味が全く分からず、混乱していた。
「香澄さんなの?」
60代の女性が、すっと立ち上がって香澄に頭を下げた。香澄もつられて頭をぺこりと下げた。
「初めまして。小森の元妻です」
「あ……」
香澄は、その言葉で理解した。
小森という苗字は、香澄の母親の再婚相手の苗字。
何故か母親が再婚した時、知らない間に自分も苗字を変えられていた。
生まれてから続いていた自分の苗字がいつのまにか奪われていた。
でも、その挙句母親は香澄を拒絶して、香澄の祖母のところに預けたまま。
結局何のために苗字を変えさせたのか……と子供の頃からずっと疑問に思っていたが、この遺産相続問題が出てきたことで、1つだけ理由を思いついた。
連れ子が、被相続人の養子になっていれば、被相続人の遺産を相続する権利があるそうだ。
でも、香澄は知っている。
香澄の母が、香澄のためにそんなことはしないことを……。
そんな経緯、からの元奥さんと……おそらく本当の息子さん……香澄の母曰く、女狐と子狸さんとの初対面が今日だった。
「……いろいろすみません……」
香澄は、様々な事情や感情を考えた結果、こう言う言葉しか出てこなかった。
2人の顔を見ることも、躊躇われた。
「皆さん、お待たせして申し訳ありませんでした」
涼が言うと、香澄の母親がこれ見よがしのため息をついた。
「ほんと、一体何なんですの?先日の話し合いで、一通り決着がつきそうだったんじゃないの?」
(え、そうなの?)
自分が知らない間に、こじれそうになっていた遺産問題があっという間に片づきかけてたということらしい。
香澄は改めて、涼の有能さに驚かされた。
(どこまでこの人は二次元キャラのようなことをするのか……)
そんなことを思いながら、香澄はとりあえず、嫌々母親の横に座ろうとした。
でも、そんな香澄の手を涼が掴む。
「どこ行くの?」
「どこって……」
「香澄の場所は、僕の隣だからこっち」
「えっ!?」
そう言うなり、香澄を優しくエスコートした涼は、自分が普段仕事で使う、高級な仕事椅子に香澄をそっと腰掛けさせた。
涼はというと、まるで香澄を守る騎士かのように立ったままだった。
「……どういうことなの?香澄ちゃん」
香澄の母親は、ギョロリと妖怪のような目で香澄を睨みつける。母としての目ではなく、それは女の嫉妬の目だと思った。
「わ、私に言われても……」
香澄は自分の母親だけでなく、母親の敵……女狐さんと子狸さんからの視線を受け止めていたこともあり、吐きそうなほど身体中に痛みを感じた。
(逃げたい、怖い)
「大丈夫だよ」
「え?」
「何があっても、僕が君を守ってみせるから」
涼は、震える香澄の肩にそっと手を置きながら、香澄以外の3人に目配せをした。
そこには、香澄にとって想定外の人物が勢揃いしていた。
「なんで……お母さん……」
バレンタインの日と同じように、香澄の母親は事務所のふかふかソファーに堂々と座っていた。
あの日と違うのは2点。
1つは、母親の機嫌。バレンタインの日は、顔を見るのも嫌になるくらいご機嫌だったのに、今は誰が見ても苛立っているということがよくわかる表情をしている。貧乏ゆすりもしていた。
そしてもう1つは、母親以外に2人、母親の反対側のソファに座っていたこと。
1人は60代くらいの、白髪まじりの髪とし●むらで売ってそうなワンピースに身を包んだ細い女性。もう1人はメガネにぽっちゃり体型、少しだけぴちぴちのスーツを着た30代くらいの男性だった。
(この2人……目元がよく似ていな……)
香澄はいつもの人間観察の癖を無意識に発揮しながらも、この状況の意味が全く分からず、混乱していた。
「香澄さんなの?」
60代の女性が、すっと立ち上がって香澄に頭を下げた。香澄もつられて頭をぺこりと下げた。
「初めまして。小森の元妻です」
「あ……」
香澄は、その言葉で理解した。
小森という苗字は、香澄の母親の再婚相手の苗字。
何故か母親が再婚した時、知らない間に自分も苗字を変えられていた。
生まれてから続いていた自分の苗字がいつのまにか奪われていた。
でも、その挙句母親は香澄を拒絶して、香澄の祖母のところに預けたまま。
結局何のために苗字を変えさせたのか……と子供の頃からずっと疑問に思っていたが、この遺産相続問題が出てきたことで、1つだけ理由を思いついた。
連れ子が、被相続人の養子になっていれば、被相続人の遺産を相続する権利があるそうだ。
でも、香澄は知っている。
香澄の母が、香澄のためにそんなことはしないことを……。
そんな経緯、からの元奥さんと……おそらく本当の息子さん……香澄の母曰く、女狐と子狸さんとの初対面が今日だった。
「……いろいろすみません……」
香澄は、様々な事情や感情を考えた結果、こう言う言葉しか出てこなかった。
2人の顔を見ることも、躊躇われた。
「皆さん、お待たせして申し訳ありませんでした」
涼が言うと、香澄の母親がこれ見よがしのため息をついた。
「ほんと、一体何なんですの?先日の話し合いで、一通り決着がつきそうだったんじゃないの?」
(え、そうなの?)
自分が知らない間に、こじれそうになっていた遺産問題があっという間に片づきかけてたということらしい。
香澄は改めて、涼の有能さに驚かされた。
(どこまでこの人は二次元キャラのようなことをするのか……)
そんなことを思いながら、香澄はとりあえず、嫌々母親の横に座ろうとした。
でも、そんな香澄の手を涼が掴む。
「どこ行くの?」
「どこって……」
「香澄の場所は、僕の隣だからこっち」
「えっ!?」
そう言うなり、香澄を優しくエスコートした涼は、自分が普段仕事で使う、高級な仕事椅子に香澄をそっと腰掛けさせた。
涼はというと、まるで香澄を守る騎士かのように立ったままだった。
「……どういうことなの?香澄ちゃん」
香澄の母親は、ギョロリと妖怪のような目で香澄を睨みつける。母としての目ではなく、それは女の嫉妬の目だと思った。
「わ、私に言われても……」
香澄は自分の母親だけでなく、母親の敵……女狐さんと子狸さんからの視線を受け止めていたこともあり、吐きそうなほど身体中に痛みを感じた。
(逃げたい、怖い)
「大丈夫だよ」
「え?」
「何があっても、僕が君を守ってみせるから」
涼は、震える香澄の肩にそっと手を置きながら、香澄以外の3人に目配せをした。