二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「そうだよ、香澄。もっと、僕を好きだと言って」
「でも、それは」
「思い出して、香澄。これは、僕の仕事なんだよ」
「先生の……お仕事……?」
「僕は、君の弁護士として、素直な気持ちを聞かないといけないんだ。だから、もっと聞かせて。僕の仕事を、君に助けてもらいたいんだ」
「……良いんですか?」
「何が?」
「私が、もし先生を好きだって言ったら……好きになったら……私は先生を殺してしまう……」
「香澄は、僕が誰かに殺されると思うの?」

 そうは思わない。
 きっと、香澄が知らないだけで、目の前の美しい人は自分の想像を遥かに超えた修羅場を潜っているのだろう。
 だからこそ、怖がり、引きこもってばかりの自分が側にいることも、申し訳ないと思う。

「ねえ、香澄。もし、僕を殺せる人間がこの世にいるとしたら、それは間違いなく君だよ」

 ほらやっぱりと、香澄は言いそうになった。
 でもその口を瞬時に、涼の唇が塞ぐ。

「んっ……」
「こうして、僕の呼吸を止めることができるのも」

 ちゅっと音を立てては、また唇を涼は重ね、そして唇をつけたまま話す。

「心臓の鼓動を早めるのも、全部君しかできない」
「だとしたら」
「まだ、結論を出すのは早いよ。いい、香澄」

 涼は、また1つキスをする。

「人間は、いつか死ぬ。それは、僕も君も変わらない。君を愛そうが、君に愛されようが、僕はいつか死ぬんだ」

 涼は、また1つキスを落としながら、今度は香澄の唇をぺろりと舐める。

「この味も、匂いを知ろうが知るまいが、人間のゴールは一緒なんだ」
「でも…………」
「僕は、死ぬ事を恐れてはいなかった。でもね、どうせ死ぬなら、この味を覚えたい」

 涼は、今度は目元にキスをしながら、ペロリと香澄の涙を拭う。

「それに、君に愛してると言われたいし」

 次に、涼は香澄の耳たぶを舐める。

「君の匂いを抱きしめて眠り続けたい。そうして人生の最期を迎えられるなら、僕は最高に幸せだ」
「でも、でもでも」
「分かってるよ。君が、誰かに置いていかれることを恐れていることは。だからね香澄。今度は香澄が僕に求刑して」
「……え?」
「僕は、香澄をたくさん泣かせて、子供まで妊娠させた罪深い男だよ。君は、僕に終身刑を求刑するべきなんだ」
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