二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「それにしても香澄」
「はい」

 拓人は未来の遊び相手を務めながら、パーティー用の料理を準備している香澄に話しかける。
 シチューやサラダなど、ほとんどの料理は完成間近だった。
 メインディッシュは七面鳥を予定しているが、それは別の人間が買ってきてくれることになっていた。
 拓人のケーキは、涼が買った最高級の冷蔵庫の中で出番を待ち構えている。

「あんた、まだあいつのこと、先生って呼ぶの?」
「変ですか?」
「変じゃないけど……呼び捨てにしないの?」

 香澄は「ん〜」と少し考えてから、はっきり言った。

「だって、先生って言った方が萌えません?」
「なんですって?」
「職業ものシチュエーションCDで、私先生ものが特に好きなんですよ。で、今書く挑戦してるんですけど……。……ヒロインに先生って呼ばせるの、好きなんですよね」
「まさか、それだけの理由?」
「はい」
「ちなみに、あいつはそれ知ってるの?」
「知ってますよ。私の萌えについて語って欲しいって言われたので」
「…………あなた、まさか私にいつも話しているテンションで、あいつにそれ、話したの?」
「はい」
「どうして」
「話せって言うから」
「あいつが?」
「はい」
「…………ちなみに、その時あいつ、どんな表情してた?」
「にこにこと、楽しそうでした」
「へ、へえ……そう……世も末というべきか、香澄が凄すぎると言うか……」
「先輩、何言ってるんですか?」
「あの唯我独尊クソ弁護士を、あなたどうしたらあそこまで手懐けられるわけ?」
「そんなことないですよ。先生はいつも優しいです」

 その時、玄関のチャイムが鳴った。
 
「あ、いらっしゃったみたい……ちょっと出てきますね」
「はーい、いってらっしゃい……」

 拓人は、いつの間にか自分の膝下でぐっすり眠っている、小さな天使の頭を撫でながらこう囁いた。

「あなたのママ……私が見込んだ以上に只者じゃなかったわ……。あの2人の遺伝子受け継いだあなたがどうなるか、本当に見ものね……」

 拓人は、この後くるであろう人物たちのために、未来を抱き抱えて、部屋の奥のソファに座った。
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