二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
1.予想外すぎる、この出会い
 12月15日の21時過ぎ。
 生理がつい先日終わったばかりの香澄は、その影響による体調不良を押して、どうにか今日締切の原稿を担当のディレクターに提出することができた。

「疲れた……」

 香澄が達成感を味わいながら、無意識にテレビのリモコンを操作すると、キラキラと輝くイルミネーションを紹介する情報バラエティーの映像が映った。

「そっか、もうすぐクリスマスなんだ……」

 いかに外の事を知らなかったかを思い知らされたことで、香澄の高揚感はすっと消えていった。まるで、長い時間かけて作られた雪の結晶が、人の手に触れる事で一瞬で水にされてしまったかのように。
 同じタイミングで、ぴこんっとメールの着信を告げる可愛らしい音がPCのスピーカーから聞こえてきて、香澄はげんなりした。
 見たくない。でも、見ないといけない。
 数分ほど葛藤してから、香澄は恐る恐るPC画面を覗き込み、次の瞬間には長いため息をついた。

「どうしよう……」

 香澄はがっくり肩を落としながら、時計を確認した。
 ディレクターから、明日の午前中までに半分以上書き直しして欲しいという依頼がメールには書かれていた。
 いつもならそれで済んでいた。
 でも、今日はさらにもう1つ別の要素がメールには含まれていた。
 最後の方に書かれていたそれに、香澄は恐怖した。

『質の改善が見られないようなら、今後は依頼ができなくなるかもしれません』

 明らかな、戦力外通告だった。
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