二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
4.予想外続きの再会4.予想外続きの再会
『今回もとても良いシナリオ、ありがとうございました。これなら維持率も期待できると思いますよ』
2月7日 深夜。
数日前から襲いかかってくる吐き気や頭痛などの体調不良の中、どうにか香澄は与えられたミッションを無事にクリアすることができ、ホッと一息をつくことができた。
ほんの2ヶ月前、香澄に「仕事あげられないかも」宣言をしたディレクターは、あのクリスマス以降に提出するシナリオに対して相変わらず「萌えない」「リアリティがない」と言う厳しい指摘は飛ばしてくるものの、こんな褒め言葉も香澄に送ってくるようになった。
『プレイヤーさんが体全体で恋愛を楽しめるシナリオになりましたね。やはりあなたの文字だけでどれだけプレイヤーさんの本能に訴えかけられるかどうかが全てです。ここまで進化していただきありがとうございます』
香澄は、毎度その言葉を見る度に、首の皮1枚繋がった喜びと、そのきっかけになった出来事が脳内に蘇る切なさを同時に感じてしまい、複雑な気持ちになっていた。
でも、それを八島に言うことは少し憚られた。
「だから言ったでしょー!!名刺もらっておきなさいって!」
そう言われてしまうのが、目に見えていたから。
けれど香澄は、この時ある方法を使って、その寂しさ切なさを解消する方法を身につけてもいた。
そして今日も香澄は、眠るべき体調の悪さよりも、それをすることを選び、1冊のノートを手にした。
「今日はどこから書くんだったっけ……」
香澄はそう言いながら、いつものようにブックマークをクリックしながら、ノートを開いた。
それは、目指そうと思えば書籍化も目指せる有名なWEB小説のプラットフォーム。
ノートには、細かく作られたキャラクター設定や書き殴ったプロットの数々。
香澄にしか読み解けない独特の文字が、紙の上で踊っていた。
「あ、今日のランキングも上がってる……嬉しいな……」
香澄は、香澄としてではなく、「すみっこ」と言うPNで書き始めた恋愛小説が、見知らぬ誰かから評価されているのがとても嬉しいと思った。
その小説を書き始めたのは、お正月に入ってすぐ。
ヒロインは、自分と同じように引きこもりで、恋愛恐怖症。
そんなヒロインを愛してくれる男性のキャラクターの名前は……リュウにしてしまった。
優しい口調に、綺麗すぎるルックス。それでいて、1度抱かれたら忘れられない程の体の熱さ。
それは、あのクリスマスに出会ったリョウをモデルに作ったキャラクターだった。
これが、香澄があの時の彼に会いたくて仕方がなかった時に見つけた、唯一の解決法。
(せめて、物語の中でもう1度愛されたい)
そう思ってしまうくらい、香澄にとっては忘れられない人になってしまっていた。
その縁を自ら断ち切ったと言うのに。
2月7日 深夜。
数日前から襲いかかってくる吐き気や頭痛などの体調不良の中、どうにか香澄は与えられたミッションを無事にクリアすることができ、ホッと一息をつくことができた。
ほんの2ヶ月前、香澄に「仕事あげられないかも」宣言をしたディレクターは、あのクリスマス以降に提出するシナリオに対して相変わらず「萌えない」「リアリティがない」と言う厳しい指摘は飛ばしてくるものの、こんな褒め言葉も香澄に送ってくるようになった。
『プレイヤーさんが体全体で恋愛を楽しめるシナリオになりましたね。やはりあなたの文字だけでどれだけプレイヤーさんの本能に訴えかけられるかどうかが全てです。ここまで進化していただきありがとうございます』
香澄は、毎度その言葉を見る度に、首の皮1枚繋がった喜びと、そのきっかけになった出来事が脳内に蘇る切なさを同時に感じてしまい、複雑な気持ちになっていた。
でも、それを八島に言うことは少し憚られた。
「だから言ったでしょー!!名刺もらっておきなさいって!」
そう言われてしまうのが、目に見えていたから。
けれど香澄は、この時ある方法を使って、その寂しさ切なさを解消する方法を身につけてもいた。
そして今日も香澄は、眠るべき体調の悪さよりも、それをすることを選び、1冊のノートを手にした。
「今日はどこから書くんだったっけ……」
香澄はそう言いながら、いつものようにブックマークをクリックしながら、ノートを開いた。
それは、目指そうと思えば書籍化も目指せる有名なWEB小説のプラットフォーム。
ノートには、細かく作られたキャラクター設定や書き殴ったプロットの数々。
香澄にしか読み解けない独特の文字が、紙の上で踊っていた。
「あ、今日のランキングも上がってる……嬉しいな……」
香澄は、香澄としてではなく、「すみっこ」と言うPNで書き始めた恋愛小説が、見知らぬ誰かから評価されているのがとても嬉しいと思った。
その小説を書き始めたのは、お正月に入ってすぐ。
ヒロインは、自分と同じように引きこもりで、恋愛恐怖症。
そんなヒロインを愛してくれる男性のキャラクターの名前は……リュウにしてしまった。
優しい口調に、綺麗すぎるルックス。それでいて、1度抱かれたら忘れられない程の体の熱さ。
それは、あのクリスマスに出会ったリョウをモデルに作ったキャラクターだった。
これが、香澄があの時の彼に会いたくて仕方がなかった時に見つけた、唯一の解決法。
(せめて、物語の中でもう1度愛されたい)
そう思ってしまうくらい、香澄にとっては忘れられない人になってしまっていた。
その縁を自ら断ち切ったと言うのに。