二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「んっ……」

 何度も繰り返し吸われてしまう舌の感覚に、心地良いと香澄は思ってしまった。
 それから、どれくらいの時間が経ったのかは分からないが、どちらからともなく唇を離した時、香澄の唇は芹沢涼によって与えられた激しいキスにより、しっとりと濡らされていた。
 芹沢涼は、香澄の濡れた唇を自分の親指で拭ってから、その親指をぺろりと舐めた。
 まるで、香澄の全てを取り込もうとするかのように。

「あの……」

 香澄の頭は、ぼんやりとしていた。
 そんな香澄の頭を撫でてから、芹沢涼は自分の胸に香澄を抱き寄せる。

「やっと、捕まえたよ……」

(捕まえた?どういうこと?)

「ああ……この匂い……やっぱり香澄だ……」

 そう言うと、芹沢涼が香澄の首筋に顔を埋め、そこをぺろりと舐め上げる。

「ちょっ……やめて……」
「やめない。香澄に、他の男が印つけてないかちゃんと確認しないと」

 そう言うなり、耳たぶ裏にも芹沢涼はキスを落とす。

「どうして……こんなこと……んんっ」

 芹沢涼の息が吹きかかり、香澄はゾクゾクした。

「僕たちは体を重ねたんだ。もう、普通の関係じゃないよ」
「え、でもあのぉ……」

 香澄は、与えられる快感に耐えながら、率直な感想を伝えてしまった。
  
「あの……でも……先生はこういうの……慣れていらっしゃいます……よね」

 と。
 すると、ぴたりと芹沢涼のキスが止まった。
 芹沢涼が体を起こし、香澄と向き合う形になった。

(な、何で私睨まれてる……!?)

「君は、僕のことを誰とでも寝る男だと思ってる?」
「ええと……そのぉ……」

(明らかに、そういう感じに見えましたけど!?)

 八島曰く、この芹沢涼と言う男のセックスはとてもうまい方らしい。でなければ、処女の香澄が初めてのセックスで絶頂を何度も感じられるはずはないとのことだった。
 そして、処女をちゃんとイカせられると言うことは、何度も女を抱いている男である証拠だとも、八島は教えてくれた。
 だからこそ、香澄は会いたい、触れてほしいと思っていても、一方でもう手には届かない人だろうと思っていたのだ。

「ねえ、香澄……どうなの?」
「ど、どうなのと……言われましても……」

 香澄には、何故芹沢涼に自分が睨まれなくてはいけないのか、全く心当たりがない。
 でも、芹沢涼は香澄からの答えを望んでいる。

(私は何を言えば良いんだろう?)

 必死で脳みそをフル回転しようとした、その時だった。

「うっ……」

(また来た……)

「す、すみません……!」

(この綺麗な顔に汚物かけたら、切腹ものだ……!)

 香澄は、渾身の力で芹沢涼を突き飛ばしてすぐ、先ほど確認したトイレまで全力で走った。
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