二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
そもそも香澄は、自分が処女であると八島に言ったことはなかった。

「ど、どうして……私が……その……」

 処女という単語を言うのが恥ずかしくて、香澄がもごもご口を動かしていると

「ここまでの流れで、処女じゃない方がびっくりでしょ。私を誰だと思ってんのよ」

 と、間髪入れず矢島に指摘された。

「ごもっともです、はい」
「まあ、処女捨てろはさすがに言いすぎたけど……異性の肌に触れる経験、人生で1度はしてみてもいいんじゃないかしら」
「……何のために」
「恋を生むためよ」
「恋なら……普段自炊してますけど……二次元ですけど……」

 香澄がそう言った瞬間だった。
 スピーカー越しに、机が叩かれた音が香澄の耳に入ってきた。

「香澄ちゃん。真面目に聞きなさい」
「す、すみません……」

 香澄は、泣きそうになるのをぐっと堪えながら、八島の次の言葉を待った。

「だからね、あなたのセリフに問題があるから、ディレクターにこっぴどく怒られるんでしょう?わかるでしょう?」

 ぐうの音も出ない……と、香澄は思った。
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