二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「か、香澄ちゃん!?」
(げっ……すっかり忘れてた……)
1階に到着し、エレベーターから降りてからすぐ、体調不良の頭に響く声が聞こえた。
さっきまでのことが夢ではないということは、この母親からランチをせびられたこともまた、現実だったということだ。
「な、何してるの……!?」
般若のような顔をして、香澄の方に近づいてくる母親に、香澄はゲンナリした。
「芹沢先生にそんなあんたみたいな子を抱えさせて……!今すぐ降りなさい!」
母親が、香澄の服をグイッと引っ張り、芹沢涼の腕から引き剥がそうとした。
「やめなさい!そんなはしたないこと!」
「やめっ……」
(こんなところで、大声で騒がないで……!)
「やめてください」
芹沢涼が、そんな母親を言葉だけで制止した。
冷たい芹沢涼の声色は、母親だけでなく、香澄の体も硬直させる。
「先生……?うちの娘が大変失礼いたしました」
母親は、香澄が何故芹沢涼に抱えられているのかの理由は知らない。
ただ、娘がハイスペの男の腕の中にいることが許せない。
そんな感情が垣間見えるような言い方だった。
「この後は私が娘を引き取りますので!香澄、早く降りなさい!」
「いいえお母様。香澄さんは僕が、病院に連れて行きます」
「びょ、病院……?」
(やめて。この人の前で病院って言わないで)
香澄にとっては、あの救急車で運ばれた時に母親が自分に言い放った言葉がトラウマになっていた。
だから、例え今ここで病院に行くにしても、この母親にだけは知られたくなかった。
「あんた、病院なんかでお金使う気じゃないでしょうね!」
(ほらきた……)
「体調不良なんて、あんたの不摂生が原因なんだから!それくらい自分でなんとかしなさい!」
「…………はい…………」
香澄が不摂生なのは、確かに認めざるを得なかった。
今の仕事を始めてから、確かに昼夜逆転生活になったのは否めないから。
「外に働きにも行かない、ダメな娘をちゃんと育ててあげたのは誰だと思ってるの!!」
(それ、今関係ない)
「とにかく、お母さんと一緒に豪華なランチを食べに行くの!いいわね!」
(もう、反論する気力すらない)
「芹沢先生。ここからは家族の問題ですので。次の打ち合わせの時には娘は同席させないようにいたします。なのでどうぞ今日のことはご内密に」
「そうはいきません」
芹沢涼は、香澄を抱える手に力を込めた。
「香澄さんは、今後私の家族になるかもしれない女性です」
「……は!?」
「そんな女性をこのままお母様の元にお返しすることはできません」
芹沢涼は、呆然としている香澄と母親の反論を待たないまま言葉を続ける。
「お母様には、この後私のアシスタントとホテルランチを楽しんでいただけるよう、既に手筈は整えております。ですのでここでお待ちください」
「は、はあ……」
「香澄さんは、僕の車で病院へ連れて行きます。大事な診察になるかもしれないので」
そう言うなり、香澄の母親の次の言葉を待たず、芹沢涼は香澄を抱えたまま駐車場へと向かった。
(あ、フェラーリ……)
香澄は駐車場の中で最も高級そうな車が、芹沢涼の自前の車であることを確認してから、スッと意識をなくしてしまった。
そして、次に香澄が目を覚ました時、「妊娠おめでとう」と笑顔で医師に告げられてしまうことになる。
(げっ……すっかり忘れてた……)
1階に到着し、エレベーターから降りてからすぐ、体調不良の頭に響く声が聞こえた。
さっきまでのことが夢ではないということは、この母親からランチをせびられたこともまた、現実だったということだ。
「な、何してるの……!?」
般若のような顔をして、香澄の方に近づいてくる母親に、香澄はゲンナリした。
「芹沢先生にそんなあんたみたいな子を抱えさせて……!今すぐ降りなさい!」
母親が、香澄の服をグイッと引っ張り、芹沢涼の腕から引き剥がそうとした。
「やめなさい!そんなはしたないこと!」
「やめっ……」
(こんなところで、大声で騒がないで……!)
「やめてください」
芹沢涼が、そんな母親を言葉だけで制止した。
冷たい芹沢涼の声色は、母親だけでなく、香澄の体も硬直させる。
「先生……?うちの娘が大変失礼いたしました」
母親は、香澄が何故芹沢涼に抱えられているのかの理由は知らない。
ただ、娘がハイスペの男の腕の中にいることが許せない。
そんな感情が垣間見えるような言い方だった。
「この後は私が娘を引き取りますので!香澄、早く降りなさい!」
「いいえお母様。香澄さんは僕が、病院に連れて行きます」
「びょ、病院……?」
(やめて。この人の前で病院って言わないで)
香澄にとっては、あの救急車で運ばれた時に母親が自分に言い放った言葉がトラウマになっていた。
だから、例え今ここで病院に行くにしても、この母親にだけは知られたくなかった。
「あんた、病院なんかでお金使う気じゃないでしょうね!」
(ほらきた……)
「体調不良なんて、あんたの不摂生が原因なんだから!それくらい自分でなんとかしなさい!」
「…………はい…………」
香澄が不摂生なのは、確かに認めざるを得なかった。
今の仕事を始めてから、確かに昼夜逆転生活になったのは否めないから。
「外に働きにも行かない、ダメな娘をちゃんと育ててあげたのは誰だと思ってるの!!」
(それ、今関係ない)
「とにかく、お母さんと一緒に豪華なランチを食べに行くの!いいわね!」
(もう、反論する気力すらない)
「芹沢先生。ここからは家族の問題ですので。次の打ち合わせの時には娘は同席させないようにいたします。なのでどうぞ今日のことはご内密に」
「そうはいきません」
芹沢涼は、香澄を抱える手に力を込めた。
「香澄さんは、今後私の家族になるかもしれない女性です」
「……は!?」
「そんな女性をこのままお母様の元にお返しすることはできません」
芹沢涼は、呆然としている香澄と母親の反論を待たないまま言葉を続ける。
「お母様には、この後私のアシスタントとホテルランチを楽しんでいただけるよう、既に手筈は整えております。ですのでここでお待ちください」
「は、はあ……」
「香澄さんは、僕の車で病院へ連れて行きます。大事な診察になるかもしれないので」
そう言うなり、香澄の母親の次の言葉を待たず、芹沢涼は香澄を抱えたまま駐車場へと向かった。
(あ、フェラーリ……)
香澄は駐車場の中で最も高級そうな車が、芹沢涼の自前の車であることを確認してから、スッと意識をなくしてしまった。
そして、次に香澄が目を覚ました時、「妊娠おめでとう」と笑顔で医師に告げられてしまうことになる。