二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
——数時間後
(車の座席って、こんなに快適なんだ……)
今まで車といえば、バスかタクシーしか乗ったことがない
香澄にとって、高級外車であるフェラーリの助手席シートの座り心地もまた、予想外のものではあった。
が、それ以上に、香澄は人生で衝撃的すぎる予想外な出来事により、混乱の極みだった。
(妊娠……?私が……?)
WEB小説のトレンドなので、身籠もりやシークレットベビーのネタはちゃんとチェックしていた。
でも、たとえば接客業を頑張っていたり、庶民は社長令嬢だったり、絶世の美女だけど男性経験がないなど、どれもこれもが自分とは程多いヒロイン像ばかりだ。
それに、1度自分でも書いてみようかと思い、情報収集をするために、子育て中のお母さんが発信してるSNSも調べたこともあった。
けれど、そこに書かれている、心の叫びとも取れるリアルな声を見て怖くなってしまった。
(私には、絶対にできない……)
パートナーからの不理解。
義理母からの執拗ないじめ。
それこそ親の想定外の行動ばかりを繰り返す子供達……。
香澄は、自分少なくとも小2頃まで「幸せだ」と思える暮らしができていたのは、紛れもなく当たり前ではなかったのだと思わされた。
そして、父親が死んだ後に起きた、家族に関するあれこれを思い出してしまうと、余計に家族を持つということに恐怖心すら抱いてしまう。
だから香澄は、こう思っていたのだ。
(自分は、子供を産んではいけない)
それは、子供が嫌いだからではない。
自分と強制的に関わる人を増やす、ことを怖いと考えていたから。
もちろん、子供ができるようなこと……つまりセックスを今後自分としてくれる男性が現れるとも思っていなかった、というのもあるのだけれど。
そんなことを考えながら、香澄はまた気分が悪くなりそうだった。
(こんな高級車の中で吐いても賠償できない……!)
そう思った香澄は、信号待ちになったタイミングで、真剣な顔をして運転している芹沢涼の横顔を見ながら、恐る恐る声をかけることにした。
「あの……芹沢先生……私やっぱり……」
この辺のコンビニ前で下ろしてくれませんか?と言葉を繋げようとしたが、芹沢涼は香澄の言葉に覆い被せてきた。
「気分が悪い時は、必ず僕に言って下さい」
「え」
「いつでも吐いていただいても構いませんから」
「えっ」
「あと、後ろの座席にスポーツドリンクは買ってきてありますから、自由に飲んでください」
「いや、だからその……」
相手に反論の隙を与えないという、芹沢涼の意思を感じた。
「それから」
芹沢涼は香澄のお腹に手を当ててきて……。
「言ったでしょう。僕たちにはこれから話すことがたくさんありそうだと」
「だから……それは……!」
「僕たちの子供が生まれるんですから、早いところ準備しなくては」
「ちょっと待ってくださ……」
(あれ?)
ふと、香澄は思った。
妊娠3ヶ月目とは言っていた。
香澄にとって心当たりは、クリスマスの夜しかない。
だから、ちゃんとこれが自然妊娠だというのならば、間違いなく芹沢涼が父親になる。
でも芹沢涼は、香澄が芹沢涼以外の男と関係を持っていないことなど知らないはず。
それなのに、どうして芹沢涼はさも当然のように自分の子供だと、断定している。
(どうして……?)
(車の座席って、こんなに快適なんだ……)
今まで車といえば、バスかタクシーしか乗ったことがない
香澄にとって、高級外車であるフェラーリの助手席シートの座り心地もまた、予想外のものではあった。
が、それ以上に、香澄は人生で衝撃的すぎる予想外な出来事により、混乱の極みだった。
(妊娠……?私が……?)
WEB小説のトレンドなので、身籠もりやシークレットベビーのネタはちゃんとチェックしていた。
でも、たとえば接客業を頑張っていたり、庶民は社長令嬢だったり、絶世の美女だけど男性経験がないなど、どれもこれもが自分とは程多いヒロイン像ばかりだ。
それに、1度自分でも書いてみようかと思い、情報収集をするために、子育て中のお母さんが発信してるSNSも調べたこともあった。
けれど、そこに書かれている、心の叫びとも取れるリアルな声を見て怖くなってしまった。
(私には、絶対にできない……)
パートナーからの不理解。
義理母からの執拗ないじめ。
それこそ親の想定外の行動ばかりを繰り返す子供達……。
香澄は、自分少なくとも小2頃まで「幸せだ」と思える暮らしができていたのは、紛れもなく当たり前ではなかったのだと思わされた。
そして、父親が死んだ後に起きた、家族に関するあれこれを思い出してしまうと、余計に家族を持つということに恐怖心すら抱いてしまう。
だから香澄は、こう思っていたのだ。
(自分は、子供を産んではいけない)
それは、子供が嫌いだからではない。
自分と強制的に関わる人を増やす、ことを怖いと考えていたから。
もちろん、子供ができるようなこと……つまりセックスを今後自分としてくれる男性が現れるとも思っていなかった、というのもあるのだけれど。
そんなことを考えながら、香澄はまた気分が悪くなりそうだった。
(こんな高級車の中で吐いても賠償できない……!)
そう思った香澄は、信号待ちになったタイミングで、真剣な顔をして運転している芹沢涼の横顔を見ながら、恐る恐る声をかけることにした。
「あの……芹沢先生……私やっぱり……」
この辺のコンビニ前で下ろしてくれませんか?と言葉を繋げようとしたが、芹沢涼は香澄の言葉に覆い被せてきた。
「気分が悪い時は、必ず僕に言って下さい」
「え」
「いつでも吐いていただいても構いませんから」
「えっ」
「あと、後ろの座席にスポーツドリンクは買ってきてありますから、自由に飲んでください」
「いや、だからその……」
相手に反論の隙を与えないという、芹沢涼の意思を感じた。
「それから」
芹沢涼は香澄のお腹に手を当ててきて……。
「言ったでしょう。僕たちにはこれから話すことがたくさんありそうだと」
「だから……それは……!」
「僕たちの子供が生まれるんですから、早いところ準備しなくては」
「ちょっと待ってくださ……」
(あれ?)
ふと、香澄は思った。
妊娠3ヶ月目とは言っていた。
香澄にとって心当たりは、クリスマスの夜しかない。
だから、ちゃんとこれが自然妊娠だというのならば、間違いなく芹沢涼が父親になる。
でも芹沢涼は、香澄が芹沢涼以外の男と関係を持っていないことなど知らないはず。
それなのに、どうして芹沢涼はさも当然のように自分の子供だと、断定している。
(どうして……?)