二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「……たっくんっ……くっ……ふふっ……くくっ……」
ほんの少しの沈黙の後、最初にそれを破ったのは芹沢涼の堪え切れなかった笑いだった。
「な、何笑ってんのよ!バカ兄貴!」
間髪入れずに、芹沢涼の後頭部をバシッと叩きながらツッコミを入れる八島と、顔を真っ赤にしながら必死で呼吸を整えようとする芹沢涼を見ながら、香澄は、自分が空気を読まない質問をしてしまったことに気づいた。
「す、すみません!ごめんなさい!質問変えます!」
「か、香澄?」
ただでさえ、少女漫画のように大きい目をまん丸にして戸惑う八島と
「ほら……たっくんが……くく……紛らわしいことするから……くく……香澄が困って……」
笑いを堪えながら、香澄をフォローしようとする芹沢涼の対比が、香澄をますます居た堪れなくさせる。
「あの、すみません!答えづらかったら……」
「ち、違うのよ、香澄」
「え?」
「ただ、ちょっと、予想外の質問で戸惑っただけだから」
そう言うと、八島は咳払いを1つした。
「改めて自己紹介するわ。あ、もう気づいたと思うけれど八島拓人は私のPNよ」
「本名は芹沢拓人。僕としても残念なことに戸籍は男で登録されてしまっているよ」
(男性だったのか……!)
声は少し高めだから、こういう女性の声もいそうだなと思ってた。
実際の見た目と声を照らし合わせると、名前だけが男性風で女性だと言われても、何ら不思議はなかった。
むしろ、男性と言われた今の方が、香澄は色々複雑な気持ちになった。
「残念ってどういう事よ」
「たっくんが、香澄と結婚できてしまう性別って事だよ」
「あらお生憎様。これからの世の中は、性別じゃなくて人同士が結婚できるようになる世の中になるのよ。これだから頭の硬い弁護士様は……」
はーやれやれ、と言いたげなポーズを八島がする。
「ちなみに香澄」
「へっ!?」
今度は芹沢涼の方が話しかけてくる。
「彼、今はこんなだけど、高校時代は野球部で坊主だったんだ」
「え、うそ」
サラサラヘアーを棚引かせている美女風の男性が、かつて坊主だったなんて。
(き、気になる……)
芹沢涼は、香澄と目を合わせてふっと微笑んできた。
その笑みは、あのクリスマスイブのベッドでの出来事を思い起こさせた。
「見せてあげようか」
「え、いいんですか?」
「スマホに入ってるからね」
(弟の過去をスマホに入れて持ち歩くなんて、弟思いの人なんだな)
そんなことを考えていると……。
「香澄、騙されるんじゃないわよ」
「え?」
「どうせあなたのことだから、弟さんの過去の写真を持ち歩くなんて、なんて家族思い、素敵っ……とか思ってんじゃないでしょうね」
(バレてる)
八島には、一生隠し事ができないんじゃないかと、香澄は思った。
「違うんですか?」
「冗談じゃないわ。いい、香澄。いい機会だから教えてあげる」
「は、はい……」
「この男はね、人が隠したい黒歴史をピンポイントで探りあてて、いつでも脅せるようにしているだけなのよ!」
「く、黒歴史……」
「だから香澄」
そう言うと、八島はスッと立ち上がり、軽やかに香澄の横に座ってきた。
八島の香水……フローラル系だろうか……が、ほんの少しきついなと、香澄は思ってしまったのが申し訳なかった。
「この男に弱み見せるんじゃないわよ。一生脅されるから」
「い、一生?」
「それを言うなら」
「ひっ!?」
(い、いつの間にそこに……)
香澄の横のソファは、八島がしっかりとスペースを守っていたが、反対側の床スペースは空いていた。
そこに芹沢涼が跪き、香澄の手の甲にそっとキスを落としてきた。
「香澄には脅すじゃなくて、一生こうしてキスしていたいけどね」
(……脅しは否定しないんですね)
ほんの少しの沈黙の後、最初にそれを破ったのは芹沢涼の堪え切れなかった笑いだった。
「な、何笑ってんのよ!バカ兄貴!」
間髪入れずに、芹沢涼の後頭部をバシッと叩きながらツッコミを入れる八島と、顔を真っ赤にしながら必死で呼吸を整えようとする芹沢涼を見ながら、香澄は、自分が空気を読まない質問をしてしまったことに気づいた。
「す、すみません!ごめんなさい!質問変えます!」
「か、香澄?」
ただでさえ、少女漫画のように大きい目をまん丸にして戸惑う八島と
「ほら……たっくんが……くく……紛らわしいことするから……くく……香澄が困って……」
笑いを堪えながら、香澄をフォローしようとする芹沢涼の対比が、香澄をますます居た堪れなくさせる。
「あの、すみません!答えづらかったら……」
「ち、違うのよ、香澄」
「え?」
「ただ、ちょっと、予想外の質問で戸惑っただけだから」
そう言うと、八島は咳払いを1つした。
「改めて自己紹介するわ。あ、もう気づいたと思うけれど八島拓人は私のPNよ」
「本名は芹沢拓人。僕としても残念なことに戸籍は男で登録されてしまっているよ」
(男性だったのか……!)
声は少し高めだから、こういう女性の声もいそうだなと思ってた。
実際の見た目と声を照らし合わせると、名前だけが男性風で女性だと言われても、何ら不思議はなかった。
むしろ、男性と言われた今の方が、香澄は色々複雑な気持ちになった。
「残念ってどういう事よ」
「たっくんが、香澄と結婚できてしまう性別って事だよ」
「あらお生憎様。これからの世の中は、性別じゃなくて人同士が結婚できるようになる世の中になるのよ。これだから頭の硬い弁護士様は……」
はーやれやれ、と言いたげなポーズを八島がする。
「ちなみに香澄」
「へっ!?」
今度は芹沢涼の方が話しかけてくる。
「彼、今はこんなだけど、高校時代は野球部で坊主だったんだ」
「え、うそ」
サラサラヘアーを棚引かせている美女風の男性が、かつて坊主だったなんて。
(き、気になる……)
芹沢涼は、香澄と目を合わせてふっと微笑んできた。
その笑みは、あのクリスマスイブのベッドでの出来事を思い起こさせた。
「見せてあげようか」
「え、いいんですか?」
「スマホに入ってるからね」
(弟の過去をスマホに入れて持ち歩くなんて、弟思いの人なんだな)
そんなことを考えていると……。
「香澄、騙されるんじゃないわよ」
「え?」
「どうせあなたのことだから、弟さんの過去の写真を持ち歩くなんて、なんて家族思い、素敵っ……とか思ってんじゃないでしょうね」
(バレてる)
八島には、一生隠し事ができないんじゃないかと、香澄は思った。
「違うんですか?」
「冗談じゃないわ。いい、香澄。いい機会だから教えてあげる」
「は、はい……」
「この男はね、人が隠したい黒歴史をピンポイントで探りあてて、いつでも脅せるようにしているだけなのよ!」
「く、黒歴史……」
「だから香澄」
そう言うと、八島はスッと立ち上がり、軽やかに香澄の横に座ってきた。
八島の香水……フローラル系だろうか……が、ほんの少しきついなと、香澄は思ってしまったのが申し訳なかった。
「この男に弱み見せるんじゃないわよ。一生脅されるから」
「い、一生?」
「それを言うなら」
「ひっ!?」
(い、いつの間にそこに……)
香澄の横のソファは、八島がしっかりとスペースを守っていたが、反対側の床スペースは空いていた。
そこに芹沢涼が跪き、香澄の手の甲にそっとキスを落としてきた。
「香澄には脅すじゃなくて、一生こうしてキスしていたいけどね」
(……脅しは否定しないんですね)