サイダー
朝、ドンッとベッドから落ちる音が部屋に響く。





「痛っ……」





サイドテーブルの上に置いている時計を見る。





時計は8時15分を指していた。





「嘘でしょ、、、、寝坊したぁぁ!」





ヤバイヤバイ…遅刻したらナカセンに怒られる…あの人めんどくさいんだよなぁ。





ナカセンっていうのは、私の通っている高校の生徒指導の中川先生のこと。





超が何個ついても足りないくらい面倒臭い先生。





「ヤバい」と思っている時、後ろから声が聞こえた。




「俺しっかり起こしてたからな?」





「碧!?」





後ろにいたのは幼馴染の松下碧(まつした あお)だった。





「莉央全然起きないし。俺も遅刻しちゃう」





「ごめんって…!あー、今から着替える」





「はいはい、リビングで待っとく」





碧が部屋を出ていったのを確認して制服に急いで着替え、スクールバッグを手に取り、部屋を出る。





「ごめんっ!おまたせ…!」





リビングで待ってくれている碧に声をかける。





スマホをいじっていた碧が顔をあげ、私を見た瞬間ゲラゲラと笑いだした。





「ちょ…え…?何笑ってるの…?」




「頭っ…(笑)寝癖がっ…ピンッ、って…(笑)」





碧は「ダメだ…面白すぎるっ…」とツボっている。





この男…乙女に対する態度がなってないんだけど…





「もっ、もういいでしょ!時間ないし、本当に遅刻するっ!!」





碧と並んで駅を目指して走り、何とかギリギリ電車に間に合い、乗ることができた。





私は市内の高校に通っている高校2年生。





小林莉央(こばやし りお)16歳。





鎖骨よりちょっと下まで伸びた茶色の髪に茶色味がかった目。





お母さんのおかげで色素が薄めなのが嬉しいところ。





身長が低いのがちょっと悩み所だけど。





碧は同じマンションに住んでる。





まぁ…出会いはそんなによくなかったけど…(笑)





そんなこんなで何とか学校につくことができて、遅刻は免れた。





ちょうどナカセンもいなかったし!





「あっ!碧くんじゃん!」





「眠そうなの可愛いんだけど…!」





そんな声が飛び交う。





碧は高校デビューしたのか絶賛「モテ期」らしい。





どこが良いのかわかんないけど。





「はぁ!?松下くんの良さがわかんないとか相当ヤバイよ!?」





「ビックリした…って花か、、、」





碧を見てキャーキャー言っている女子達を頬杖しながら、冷ややかな目で見ていた私に話しかけてきたのは、親友の市倉花(いちくら はな)だった。





花は高校に入ってからできた友達。





同じアイドルグループを推してて意気投合した。





「ザ・女子」っていう感じの可愛い女の子。





だけどたまに口が悪くなる。





ふわふわして私の癒し。





「だって、松下くんカッコいいじゃん」





「え……どこが?」





「もう全てがっ!」





「もう…莉央は贅沢者だよ?」なんていう花の声を聞き流しながら、ぼーっと窓の外を眺める。





そういえば…碧と初めて会った時もこんな天気だったかも。
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