90日のシンデレラ

6*悪魔なカレシができたかもしれない

 窓外の流れゆく景色は変わらない。天井からみえる空だってそう。光るビルの丘を越えて、高速道路は上下左右とうねりをつけてまだまだ続いている。

 (嘘って、一体何が嘘なの?)
 (最初のガイダンスから面白いと思っていたって、それも、どういうことよ?)
 (もしかして、いいようにからかわれている? 今だけでなく、今までずっと私のこと、からかっていった?)

 何気ない北峰のセリフから、真紘は新しい謎に遭遇してしまう。思い返せば北峰の行動は理解不能なものが多くて、真紘はそのたびに悩んでいた。これはすべて真紘をだますために、わざと彼が行っていたとしたら……
 そんな思考が湧いてきて、真紘の混乱に拍車がかかる。

 (私をだまして、どういうメリットがある?)
 (あ、でも、間借りをふざけたものに仕立ててしまえば、最後の後片付けが楽になるかも)
 (あれは、おふざけでした~っていってしまえば、いろいろチャラにできるし。それを狙って?)

 首都高ドライブを楽しむ余裕がやっと出てきたのに、すっかりそれは吹き飛んだ。
 そうさせた張本人の北峰は相変わらずの涼しい顔で、楽しそうに運転をしている。

 (からかっているとすれば……)
 (この車のことも、そうかも)
 (とすれば……)

 どれがからかわれているもので、からかわれていないものなのか、真紘には区別がつかない。
 でも今こうやって車に乗っている状態で、明らかに嘘があるのなら、きっとこの車のことも含まれているのでは?
 反撃といわんばかりに、真紘はこう尋ねてみた。

 「もしかして、この天井、開けることができるのですか?」
 「お、気がついたか!」

 なかなか鋭いじゃん! といわんばかりの、北峰の声。北峰がからかっていたのは、やはり車のこと。なんとなくの真紘の推測が当たった瞬間だった。

< 104 / 159 >

この作品をシェア

pagetop