90日のシンデレラ
どうしてこう、予想外のことばかり、この人は問いかけてくるのか?
これにもいい答えが見つからず、依然、真紘は沈黙するのみ。
「よし! 決めた。シーナちゃんを俺のカノジョにする」
「は?」
「俺は、シーナちゃんとキスしたい。でもカレシでない嫌というのなら、俺がシーナちゃんのカレシになればいいだけだもんな。そうすれば、間借りのことも違和感なくなるし」
一方的に北峰は、真紘をカノジョにしてしまう。真紘の同意など、まったく関係なしに。
「ちょっと待って!」
「いいじゃん! 今から俺はシーナちゃんのカレシ、シーナちゃんは俺のカノジョ、な」
この上もなく弾んでだ声で、北峰は断言する。この軽いノリが、真紘は信じられない。
話の展開が飛躍し過ぎて、真紘は目が丸くなる。この目の大きさ、上京してから今が一番大きいかもしれない。
真ん丸な目をして硬直した真紘の両肩を、すぐさま北峰が掴む。掴むといっても、そっといたわるような優しい力で。まさに大事なカノジョを包み込むように。
柔らかく真紘を拘束してから、北峰は彼女の耳元に口を寄せた。
「ずっと思っていたけど、シャンプーのいい香りがする。堪らないねぇ~。本当は、このまま今すぐにでも押し倒してしまいところだが……時間がない」
高らかに彼女宣言を下した声が、今度は口惜しそうに耳打ちする。耳打ちして、そのお気に入りの真紘の香りを堪能すべく大きく息を吸う。耳元に当たる北峰の息づかいが、艶めかしい。
どきりとするセリフと艶のある声をもらい、温かい吐息が頬を掠める。掴まれた肩の手ひらからは熱が伝わる。
もうこんなことをされては、冷静でいられない。真紘は背中が痺れてくる。真ん丸お目目の真紘は、もう耳まで真っ赤だ。
「真紘、今日は仕方がないから帰るけど、またくるよ」
北峰の呼びかけが、「シーナちゃん」が「真紘」へと変わっていた。真紘はまだそれに気づいていない。
コチコチに硬直した真紘を認めて、北峰は口角を上げる。「じゃあね、真紘」と、最後に真紘の赤い頬にライトキスをして、北峰はマンションから出ていったのだった。
これにもいい答えが見つからず、依然、真紘は沈黙するのみ。
「よし! 決めた。シーナちゃんを俺のカノジョにする」
「は?」
「俺は、シーナちゃんとキスしたい。でもカレシでない嫌というのなら、俺がシーナちゃんのカレシになればいいだけだもんな。そうすれば、間借りのことも違和感なくなるし」
一方的に北峰は、真紘をカノジョにしてしまう。真紘の同意など、まったく関係なしに。
「ちょっと待って!」
「いいじゃん! 今から俺はシーナちゃんのカレシ、シーナちゃんは俺のカノジョ、な」
この上もなく弾んでだ声で、北峰は断言する。この軽いノリが、真紘は信じられない。
話の展開が飛躍し過ぎて、真紘は目が丸くなる。この目の大きさ、上京してから今が一番大きいかもしれない。
真ん丸な目をして硬直した真紘の両肩を、すぐさま北峰が掴む。掴むといっても、そっといたわるような優しい力で。まさに大事なカノジョを包み込むように。
柔らかく真紘を拘束してから、北峰は彼女の耳元に口を寄せた。
「ずっと思っていたけど、シャンプーのいい香りがする。堪らないねぇ~。本当は、このまま今すぐにでも押し倒してしまいところだが……時間がない」
高らかに彼女宣言を下した声が、今度は口惜しそうに耳打ちする。耳打ちして、そのお気に入りの真紘の香りを堪能すべく大きく息を吸う。耳元に当たる北峰の息づかいが、艶めかしい。
どきりとするセリフと艶のある声をもらい、温かい吐息が頬を掠める。掴まれた肩の手ひらからは熱が伝わる。
もうこんなことをされては、冷静でいられない。真紘は背中が痺れてくる。真ん丸お目目の真紘は、もう耳まで真っ赤だ。
「真紘、今日は仕方がないから帰るけど、またくるよ」
北峰の呼びかけが、「シーナちゃん」が「真紘」へと変わっていた。真紘はまだそれに気づいていない。
コチコチに硬直した真紘を認めて、北峰は口角を上げる。「じゃあね、真紘」と、最後に真紘の赤い頬にライトキスをして、北峰はマンションから出ていったのだった。