90日のシンデレラ
7*激甘な悪魔
目覚めた翌日は、土曜日だ。
休日の朝のベッドの中であれば、その寝覚めはさぞかしご機嫌なもの――そう世間一般では決まっている。だが真紘はそうではなくて、この上もなく複雑な気持ちで翌朝を迎えていた。
(あれは、一体、何だったんだろうか?)
(悪夢であれば、それでいい。あれが夢であれば、どんなにいいことか)
(でも、そうではなくて……)
悪夢とは、北峰の宣言のこと。「今から俺はシーナちゃんのカレシ、シーナちゃんは俺のカノジョ」というものだ。
深夜のマンション玄関三和土の上で、両肩を掴まれて告白されて、正確には告白まがいのことになるのだが、真紘は北峰のカノジョになった。
告白が終われば、真紘はキスをもらう。唇ではなくて、左頬に。
そのあと北峰は、用は済んだとばかりにさっさとマンションを去っていったのだった。
そこから先はへなへなと玄関上がり框付近で座り込んでしまったのを、真紘は覚えている。この一連の出来事が現実のものとは思えなくて、ただ脱力した。
それから四つん這いになって寝室へ向かったことも覚えている。ベッドに入ろうと掛け布団を捲ったときに、自分が北峰のスーツジャケットを着ていることに気がついた。
このまま寝てはいけない――服がしわだらけになってしまうと奇妙な義務感が湧いてきて、真紘はジャケットを脱いだ。そして、わざわざ玄関横の部屋までいき、彼の服をハンガーにかけたのだった。
そうここまでは記憶にある、ここから先は……
(きっと、疲れ果てて死んだように眠ってしまったんだろうな~)
(全然、記憶がないんだもん)
(北峰さん、またくるといっていたけど、それはいつ?)
窓外は明るくて、さわやかな青空が広がっている。梅雨の時期の貴重な晴れである。
真紘のこの何とも説明のつかない、もやんとした気持ちをあざ笑うかのような快晴であった。
(とりあえず……)
(できることをしよう。休日は洗濯の日と決めているんだから)
(そうそう、何かしていれば気が紛れるし)
ちょっと刺激的な悪夢をみたのだと自分に信じ込ませて、真紘はベッドを抜け出した。
休日の朝のベッドの中であれば、その寝覚めはさぞかしご機嫌なもの――そう世間一般では決まっている。だが真紘はそうではなくて、この上もなく複雑な気持ちで翌朝を迎えていた。
(あれは、一体、何だったんだろうか?)
(悪夢であれば、それでいい。あれが夢であれば、どんなにいいことか)
(でも、そうではなくて……)
悪夢とは、北峰の宣言のこと。「今から俺はシーナちゃんのカレシ、シーナちゃんは俺のカノジョ」というものだ。
深夜のマンション玄関三和土の上で、両肩を掴まれて告白されて、正確には告白まがいのことになるのだが、真紘は北峰のカノジョになった。
告白が終われば、真紘はキスをもらう。唇ではなくて、左頬に。
そのあと北峰は、用は済んだとばかりにさっさとマンションを去っていったのだった。
そこから先はへなへなと玄関上がり框付近で座り込んでしまったのを、真紘は覚えている。この一連の出来事が現実のものとは思えなくて、ただ脱力した。
それから四つん這いになって寝室へ向かったことも覚えている。ベッドに入ろうと掛け布団を捲ったときに、自分が北峰のスーツジャケットを着ていることに気がついた。
このまま寝てはいけない――服がしわだらけになってしまうと奇妙な義務感が湧いてきて、真紘はジャケットを脱いだ。そして、わざわざ玄関横の部屋までいき、彼の服をハンガーにかけたのだった。
そうここまでは記憶にある、ここから先は……
(きっと、疲れ果てて死んだように眠ってしまったんだろうな~)
(全然、記憶がないんだもん)
(北峰さん、またくるといっていたけど、それはいつ?)
窓外は明るくて、さわやかな青空が広がっている。梅雨の時期の貴重な晴れである。
真紘のこの何とも説明のつかない、もやんとした気持ちをあざ笑うかのような快晴であった。
(とりあえず……)
(できることをしよう。休日は洗濯の日と決めているんだから)
(そうそう、何かしていれば気が紛れるし)
ちょっと刺激的な悪夢をみたのだと自分に信じ込ませて、真紘はベッドを抜け出した。