90日のシンデレラ
 カノジョになったから、どうのこうのとはない。今までどおりでいく。そう真紘は、結論付けた。
 そもそもが北峰は忙しい。だから、ここへの訪れはずっと不規則であった。連絡なんか待っていたら、一日が終わってしまう。

 (あれ?)

 ふと真紘は、こんなこともにも気がついた。
 とにかく突拍子のない北峰だから、あとのなって「カノジョにする」といったことを返上してくるかもしれないと。

 (それ、充分にあり得るわよね)

 カノジョの地位から降格する可能性があると気がつけば、ますます今までどおりでいいと真紘は思う。
 よくよく思い返せば、この一連の騒動に真紘の意志は一切入っていないのだ。

 (合意のない付き合いだもん、勝手に向こうがいっているだけ)
 (そうそう、今までと同じ!)
 (あ、でも、引き続き警戒しておくことに越したことはないな)

 さてと洗濯洗濯と、真紘は北峰のクローゼット部屋をあとにした。



 ***



 とはいうものの、少々の好奇心が真紘の中に残っていた。
 少々の好奇心――それは、首都高からみたブルーツリーと路駐の際にフロントガラスに張り付けた謎のタグである。
 真紘は北峰のカノジョでも何でもないのなら、ほっておいてもいいものの、このふたつについては頭の隅にこびり付いて離れない。

 (ツリーは、多分あの辺り……)

 助手席から確認できた標識を頼りに、真紘は大体の位置を推測する。あんなに輝いている場所なのだ、そこは東京でも一段と賑やかなところで、きっと観光スポットやショッピングエリアのはず。
 今日は休日で買い物にいく。いつもならデパートにいくのだが、今回はその方面に足を延ばそう。新たな東京散策だ。
 ひとつの行動でふたつの目的を達成できるなんて、これ、とても有意義な休日ではないか!

 洗濯を終えて、善は急げで準備する。外出用意ができれば、まだランチには早い時刻である。
 お昼ご飯は何食べようかな~と、軽い足取りで真紘はマンションを出た。

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