90日のシンデレラ
 「…………」

 ずいぶんオープンな駐車場だなと思いながら、真紘は周りを見渡した。
 ここでの景色も借り上げマンション付近とそう変わりない。だが、地下鉄の駅の入り口を見つける。

 (あんなところに地下鉄の駅が!)
 (さすが東京、地下網の密さは半端じゃないな)
 (あ、あれか?)

 もう一度ぐるりと周りを見渡して、真紘は見つける。昨晩の北峰が操作していたポールを。
 近づいてじっくりとそれを観察する。駅券売機のような操作面に向かい合えば、その上部にでかでかと『パーキング・チケット』とあった。

 (これ、パーキングチケット発給機なんだ)
 (教習所の教本だけの世界かと思っていたけど、実在するんだ~)

 さすが東京、たくさんの人と車を抱えている大都市である。
 真紘の田舎では駐車用のスペースに問題がないから、このような駐車システムとは無縁である。ここでも、都会と田舎の違いを認識する。
 そばの路駐車をよくみれば、昨日の北峰が貼っていたのと同じ紙切れがフロントガラス内側にくっついている。そこには駐車制限時間が印字されていた。それによると、ここでの利用は四十分しかない。北峰が時間がないといっていたのは、このことだったのである。

 (確かに、焦るかな~)
 (お父さんの車だって、いっていたし)
 (夜中の巡回パトロールもそうだけど、車にいたずらされても困るだろうし)

 普段の北峰の非常識ぶりを知っているだけに、この品行方正な振る舞いに感心する。夜中であれば多少の時間オーバーはわからないと思うが、きちんと彼は守っていた。北峰のハチャメチャなところは、一部分であってすべてではないようだ。

 (そう思えば……)
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