90日のシンデレラ
(確かレポート作成時に、ちょうど東京本社とうちの部署との間で、法令の通達に時間差があったんだよなぁ~)

 製品最終テスト結果報告書作成で、法令改正で一部が変更となっていた。だが、きちんと真紘の部署まで変更事項が通達されていなくて、気がつかず従来のフォームで提出した。納品先から指摘されて、そのときは再提出でこと済んだ。

(納品先が馴染みのところだったから、それで終わったけど、あれ、新規の納品先だと大変なことだよ!)
(衝動的に、”きちんと前もって教えてください!”って本社へ文句をいいたくなったから、その勢いで書いたんだった)
(系列序列があるにしても、ほかの子会社と差がつけられているのはひどい、って内容で出したような気がする)
 真紘が提出したレポートに、改善案はない。今後の対応を期待するで締めくくったような気がする。

 改善案を書かなかったのは、単に思い浮かばなかったから。
 それもあるが、地方の一平社員が「すぐに教えてくれないなんて、ひどい!」と吠えたって、本社がわざわざ相手にするとは思えなかったのだった。
 系列に入って日の浅い社であれば、これまでにもいくつか通達に漏れがあった。文句があるなら子会社のほうも関連省庁にアンテナを張れ、で終わりとなりそうでもある。

 同じように、情報共有不備は本社と子会社の縦のラインだけでなく、子会社間の横のライン上にもある。色々な意味で一番本社から遠い真紘の社が、一番情報を知るのが遅い。これも、何かと不満であった。
 そう、それは社内取引で連絡を入れたときのことである。「え、もう変更したから、こっちのフォームで再送して」っていわれたこともあるし、中間管理職の人事についても告示が遅くて旧部署名で作成してしまったこともある。普通なら考えられない、うっかりミスである。

(『業務改善』と銘をうったけど、あれ、実質は『本社の通達の不手際への文句』だよ)

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