90日のシンデレラ

２＊真紘、悪魔と出会う

　東京――それは、本社所在地であるだけでなく、老若男女問わず憧れと希望と夢を抱く土地。
　真紘だってそうだった。つい、この間までは。

　飛行機に乗って、約二時間。羽田空港に降り立てば、孫会社のある田舎とは別世界が広がっていた。同じ日本なのに、見上げる空がこうも狭いのはなぜなのか？　また、おそろしく人が多い。
　ニュース番組に映し出されるよくある風景が、いま自分の目の前に広がっている。
　(ほー、あれは本当にある風景なんだ)
　田舎者よろしくで、もう真紘は自分を取り巻くものすべてが、キラキラしてみえる。
　本社所在地まで移動するも、その間のモノレールや山手線、並走して走る高速道路に、目が釘付けだ。

　(学生のときに遊びにきたけど、五年以上前の話だもん)
　(わかってはいたけれど……)
　(予想以上の変貌に、もう近未来ファンタジーだわ)

　スマートフォンがあって、よかったぁ～、なんて思う。どんなに街の顔が変わっても、天空からの位置情報があれば、目的地にたどり着ける。
　とりあえず荷物を持ってスマートフォンの案内に従って歩き、真紘は本社ビルに到着したのであった。