90日のシンデレラ
 その上、瑠樹はこうもいう。
 真紘が住んでいる借り上げマンションが、通勤に都合がいいから俺に貸せと。
「はぁ?」である。
 そんな真紘の意見など構わずに、瑠樹は仮眠部屋として、ここへ勝手に出入りするようになったのだった。

 社内では怖い鬼主任、社外でも傍若無人な押し掛け居候――東京って、地方出身者に対してこんなに人権軽視なところだったのか?

(でもこれは、所詮は三ヶ月のことだ!)
(たったの三ヶ月のことなのよ、真紘!)
 そう自分にいいきかせる。自分が田舎孫会社の代表であれば、社の評価のためでもあるのだと真紘は耐えると決めた。

 なのに……

 どこで、道を誤ったのだろう。
 あの鬼主任が、この部屋では真紘のカレシとなるのだ。
 しかもとびきり真紘に甘いカレシである。

「う、ぅうん」
 少し窮屈そうな寝言を漏らして、薄く瑠樹の瞼が開く。
 真紘は彼の隣で横になったまま、瑠樹を観察した。

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