90日のシンデレラ
 (総務部の人って、みんな若いのね)
 (鎌田さんが有望な若手ってのはわかるけど、他の人も似たり寄ったりの年齢で……)
 (こう、何ていうのだろう、中ボスみたいな年配の部長とかがドンと後ろ構えていてもよさそうだけど)

 ちらりと真紘は鎌田女史のいる上座の席をみる。今いる総務部のスタッフは鎌田を入れて五人。その男女まざった五人の中で、鎌田が一番若い。残りは彼女よりも少し上の人たちだ。
 しかし、年上といっても三十代前半だろう。パッとみた感じ、そこに三十代後半はいない。

 (これってさぁ~)
 (むちゃくちゃ、若くない? 企画なんて社のブレーンみたいな部署なのに、仕切ってるのが若手だなんて)
 (あ、そっか! 新人研修だから、あえて若者に担当させているとか?)

 真紘の中でそんな結論にたどり着けば、今後の研修では年配の社員にご対面するかもしれない。研修は三ヶ月もあるのだ、都会っぽくない本社社員に出会う可能性は残っている。
 そんなことを考えていなければ、やっていけない。若くて有能で美形というキラキラした人たちの中にいれば、劣等感だけが増大してしまう。
 研修開始数時間で、すでに「早く終わんないかなぁ~、この研修」などと真紘は思っていた。

 「?」

 そんな真紘の視界の隅に、ある男性が映った。
 彼は総務部の席の、会議用の長テーブルの中央部分に陣取っていた。眉間にしわを寄せた厳しい顔をし、一心不乱に資料を読んでいる。その横のスタッフは楽しく談話しているのにだ。
 和む総務部若手グループとそれに一線を画す男性――同じ総務部のテーブルなのに、ひどく対照的に真紘にはみえた。

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