90日のシンデレラ
†††
「おはようございます!」
研修一日目がはじまった。
田舎とは比べものにならない満員電車に乗って、出勤する。田舎路線じゃないから運行ダイヤを心配することはないのだけれど、業務開始二十分前に到着した。
指定された会議室にはすでに鎌田女史ら三人のスタッフがいて、テーブルをセッティングしている最中であった。
「おはようございます、椎名さん。お部屋は問題ないかしら?」
早速、鎌田があの社宅のことを尋ねてきた。
「はい。素敵な部屋で、恐縮です。あの……できるだけ汚さないようにしますので」
「あらあら。お気遣いありがとうございます。家族物件だから近隣の子供の声が気になるかもしれないけれど、そこはご容赦願いますね」
爽やかに鎌田女史にいわれ、真紘は大きくうなずいた。この気遣い、本当にうれしい。
もっとこのまま鎌田女史と話をしていたいが、そうはいかない。廊下が騒がしくなり、他の研修会参加者が到着したようだ。
椎名さんはこっちねと、真紘は窓際の前のほうの席を指定される。
窓際だけど壇上に近い自分の席をみて、真紘は思う。この位置では登壇者に話しかけられやすい、後ろのほうの席がよかった、と。
配席はディスカッションかなにかの都合なのだろうか、グループ会社所在地区単位でまとめられていた。研修は自由席であるはずと、勝手な期待していた自分の浅はかさを真紘は呪ってしまう。そこまで都合よく現実は回るものではないのだ。
(そうよね、そんなわけないわよね)
「おはようございます!」
研修一日目がはじまった。
田舎とは比べものにならない満員電車に乗って、出勤する。田舎路線じゃないから運行ダイヤを心配することはないのだけれど、業務開始二十分前に到着した。
指定された会議室にはすでに鎌田女史ら三人のスタッフがいて、テーブルをセッティングしている最中であった。
「おはようございます、椎名さん。お部屋は問題ないかしら?」
早速、鎌田があの社宅のことを尋ねてきた。
「はい。素敵な部屋で、恐縮です。あの……できるだけ汚さないようにしますので」
「あらあら。お気遣いありがとうございます。家族物件だから近隣の子供の声が気になるかもしれないけれど、そこはご容赦願いますね」
爽やかに鎌田女史にいわれ、真紘は大きくうなずいた。この気遣い、本当にうれしい。
もっとこのまま鎌田女史と話をしていたいが、そうはいかない。廊下が騒がしくなり、他の研修会参加者が到着したようだ。
椎名さんはこっちねと、真紘は窓際の前のほうの席を指定される。
窓際だけど壇上に近い自分の席をみて、真紘は思う。この位置では登壇者に話しかけられやすい、後ろのほうの席がよかった、と。
配席はディスカッションかなにかの都合なのだろうか、グループ会社所在地区単位でまとめられていた。研修は自由席であるはずと、勝手な期待していた自分の浅はかさを真紘は呪ってしまう。そこまで都合よく現実は回るものではないのだ。
(そうよね、そんなわけないわよね)