90日のシンデレラ
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 「はじめまして、総務部の北峯です。今回の業務改善コンペの総括を担当します。まずは、エントリーをありがとうございます」
 本社社員の余裕の表情で、右手を差し出して、茶髪ウェーブ男子が自己紹介をする。
 大きくて、でもすらりとした指先の北峰の右手をじっとみて、少し悩んだあと真紘はその手を握った。
 「はじめまして。……社の椎名です。本社でははじめてなので、いろいろご迷惑をおかけするかと思います。ご指導のほどよろしくお願いします」
 と、傍からみればいっぺんとおりの定型挨拶をするが、これ、真紘の場合は心の底からのもの。

 (お願い、あまり突っ込んだこといわないでください)
 (あのレポート、悪気があって書いたわけではないんです!)
 (ちょうど社で不具合があって、私に気持の余裕がなくて……タ、タイミングが悪かったというか……)

 そんな真紘の心の声とは裏腹に、茶髪ウェーブ男子の隣の年配女性が、挨拶をする。
 「こんにちは、北峰さんと同じく総務で、コンペ総括補佐になります、山形です」
 こちらの女性からは、握手はない。
 山形は北峯よりもずっと年上で、アラフィフの女性にみえた。本当にアラフィフかどうかは別にして、ここにいるメンバーの中で最年長のベテランに間違いない。

 (サブリーダーのほうが年上なんて、このコンペ、リーダー研修の実習とかも兼ねているのかな?)

 そんな疑問がわいてで出たが、すぐに思考は邪魔される。まだまだメンバーの自己紹介の最中なのだ。
 続いてのふたりは、真紘と同じエントリーメンバーであった。

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