90日のシンデレラ
(ほ~、終わったよ~)
(やっと、終わったよ~)
(長い第一日目だったよ~)
真紘は退勤のために、ひとりでエレベーターを待っていた。ひとりになれば、大いに緊張が緩んでいく。
解散といわれたが、大村と堀江はもう少し詰めていくといい、スタッフのふたりはそれに付き合っていた。結局のところ、コンペ作業室を出たのはまだ何もない着手していない真紘だけであったのだ。
そんなに遅い時刻ではないのだが、本社社員はさっさと帰るのか、静かな静かな本社ビルである。
ゆえにエレベーターも空いているらしく、ほどなくしてエレベーターがやってくる。
ピンポーンと軽いチャイム音がして、一番端のエレベーターが到着した。
「シーナちゃん!」
エレベーターの扉が開くと同時に背後から、男性の声がきこえる。
「シーナちゃん、ちょっと待って!」
椎名は真紘の名字であるが、シーナという名前ではない。ちゃん付けも、ここは本社で勤務中、ありえない。
(よく似た名前の人が、いるんだろうなぁ~)
業務の緊張から解放されていれば、のん気にそう思う。
自分とは無関係と信じ切って、真紘はやってきたエレベーターに乗り込んだ。そして、パネルの前に立ったときだった。
自動で閉まるエレベーターの扉のすき間をすり抜けて、ひとりの男性が飛び込んできたのだ。
(え?)
無意識の動作で真紘が操作パネルの「開く」を押そうとしたが、男性の駆け込みのほうが早かった。
ブーンと茶髪の男性の背後で、エレベーターの扉が閉まった。
(え? 北峰さん?)
真紘は操作パネルの前で、突如現れた北峰に目を丸くしたのだった。
(やっと、終わったよ~)
(長い第一日目だったよ~)
真紘は退勤のために、ひとりでエレベーターを待っていた。ひとりになれば、大いに緊張が緩んでいく。
解散といわれたが、大村と堀江はもう少し詰めていくといい、スタッフのふたりはそれに付き合っていた。結局のところ、コンペ作業室を出たのはまだ何もない着手していない真紘だけであったのだ。
そんなに遅い時刻ではないのだが、本社社員はさっさと帰るのか、静かな静かな本社ビルである。
ゆえにエレベーターも空いているらしく、ほどなくしてエレベーターがやってくる。
ピンポーンと軽いチャイム音がして、一番端のエレベーターが到着した。
「シーナちゃん!」
エレベーターの扉が開くと同時に背後から、男性の声がきこえる。
「シーナちゃん、ちょっと待って!」
椎名は真紘の名字であるが、シーナという名前ではない。ちゃん付けも、ここは本社で勤務中、ありえない。
(よく似た名前の人が、いるんだろうなぁ~)
業務の緊張から解放されていれば、のん気にそう思う。
自分とは無関係と信じ切って、真紘はやってきたエレベーターに乗り込んだ。そして、パネルの前に立ったときだった。
自動で閉まるエレベーターの扉のすき間をすり抜けて、ひとりの男性が飛び込んできたのだ。
(え?)
無意識の動作で真紘が操作パネルの「開く」を押そうとしたが、男性の駆け込みのほうが早かった。
ブーンと茶髪の男性の背後で、エレベーターの扉が閉まった。
(え? 北峰さん?)
真紘は操作パネルの前で、突如現れた北峰に目を丸くしたのだった。