90日のシンデレラ
4*悪魔の流儀
「失礼します! 課題レポートの続きを書きにきました!」
マダム山形の発言をもらって、今日はどうしようかなと真紘が悩んでいたときだった。はつらつとした声がコンペ部屋に響き、真紘の滅入る気分を吹き飛ばす。エントリーメンバーのひとりの大村女史の登場であった。
「大村さん、いらっしゃい。今日は早いわね」
「はい! 今日は道が空いていて、移動がスムーズでしたので」
営業の外回りが順調だったと大村はいう。
つかつかと中央の大テーブルに歩み寄ると、大村はどんと書類鞄を置いた。おもむろにノートPCを取り出し、ちゃっちゃと充電コードを繋いでいく。この慣れた仕草に、彼女はこの部屋の常連でかつ大テーブルのその位置が彼女のテリトリーだとわかる。
「道中でいいアイデアも浮かんだし、早く形にしたいです。うまくタイミングが合えば、瑠樹さんにみてもらえるし、ね」
(るきさん?)
(るきさんって、誰?)
真紘の耳に知らない名が飛び込んできた。コンペ案件やる気満々の大村とは対照的に、真紘はこれにも困惑する。
(あ、そういえば、エントリーメンバーは全部で八人だった)
(きっと、そのひとりね、るきさんって)
(るきって、変わった名字ね。どんな漢字なんだろう?)
きゃらきゃらと弾む声の大村と落ち着いた声のマダム山形の会話が繰り広げられる横で、真紘はそんなことを思う。
「せっかくのところ申し訳ないのだけど、瑠樹さん、本日は出張です」
「えーー、いないの?」
「そうなの。急に決まった出張で、新幹線も当日券よ」
マダム山形の発言をもらって、今日はどうしようかなと真紘が悩んでいたときだった。はつらつとした声がコンペ部屋に響き、真紘の滅入る気分を吹き飛ばす。エントリーメンバーのひとりの大村女史の登場であった。
「大村さん、いらっしゃい。今日は早いわね」
「はい! 今日は道が空いていて、移動がスムーズでしたので」
営業の外回りが順調だったと大村はいう。
つかつかと中央の大テーブルに歩み寄ると、大村はどんと書類鞄を置いた。おもむろにノートPCを取り出し、ちゃっちゃと充電コードを繋いでいく。この慣れた仕草に、彼女はこの部屋の常連でかつ大テーブルのその位置が彼女のテリトリーだとわかる。
「道中でいいアイデアも浮かんだし、早く形にしたいです。うまくタイミングが合えば、瑠樹さんにみてもらえるし、ね」
(るきさん?)
(るきさんって、誰?)
真紘の耳に知らない名が飛び込んできた。コンペ案件やる気満々の大村とは対照的に、真紘はこれにも困惑する。
(あ、そういえば、エントリーメンバーは全部で八人だった)
(きっと、そのひとりね、るきさんって)
(るきって、変わった名字ね。どんな漢字なんだろう?)
きゃらきゃらと弾む声の大村と落ち着いた声のマダム山形の会話が繰り広げられる横で、真紘はそんなことを思う。
「せっかくのところ申し訳ないのだけど、瑠樹さん、本日は出張です」
「えーー、いないの?」
「そうなの。急に決まった出張で、新幹線も当日券よ」