90日のシンデレラ
 「服装とか、カジュアルオフィススタイルっていうのかな、ラフすぎず固すぎずで、バランス感覚がすごいなと。田舎ではスーツか作業着だけですから」
 「そうなのよ~、お洋服もすてきなのよ~」
 真紘の回答に満足し、大村はうっとりする。さらに
 「他には?」
 と、真紘に迫る。この大村の目は、キラキラだ。

 (え?)
 (あ、そうか!)
 (北峰さんは、社のアイドルなんだ)

 この目の輝きをみて、真紘は悟る。『できる上司』ではなくて『推し』として、大村は褒めてほしいのだと。そうとわかれば、真紘も臨機応変に言葉を変える。

 「瑠樹さんって呼称も、オシャレですよね。都会風の名前だから、カタカナにしてもすんなり通じそうだし。海外の仕事でも、うまくいきそう」
 「そうよ、お察しのとおり、瑠樹さん、海外案件も任されているのよね~」
 「え! コンペ総括の立場も若いのではと思ったけど、海外のお仕事もしているんですか! 優秀なんですね」

 いろいろ兼任していると山形からきかされていたが、ここに海外案件が交ざっていたとは!
 この「優秀なんですね」は、真紘の真っ正直な感想である。
 「そうなのよ~、できる男なのよ~」
 お前、よくわかっているじゃないか、といわんばかりに大村はかぶりを振る。この大村のジェスチャー、大村の中では北峰は崇拝の対象にまで達していそうだ。

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