90日のシンデレラ
(そんなの、きいていないよ~)
(一昨日決まったことなら、昨日教えてほしかった)
(もう、どうしてこの人は、いつもこうなんだろう)

 そんな真紘の不満が顔に出ていたのだろう。
 シンクから手が動かせない真紘を、瑠樹は背後から抱き締めた。
(?)
 そして、耳元でこうささやいた。

「ごめん、うっかり伝えるのを忘れていた。これは、どうしても外せない会議だ。真紘なら、わかるだろ?」

 そんなふうにいわれると、「ダメだ」とはいえない。真紘だって、孫会社所属になるけど瑠樹と同じ会社の社員なのだ。
「…………」
 なんともいえず、小さく息をつく。
 そんな真紘に瑠樹は後ろから頬にキスをした。

「サンキュー、真紘」
 それきりで出ていくかと思えば、なにやらごそごそと瑠樹はポケットを探る。ポケットから小さな箱を取り出した。それは、指輪が入っていそうな布貼り箱だ。
 シンク前で後ろから真紘を抱いたまま、彼女の目の前で瑠樹は開けた。中には、赤のピアスがあった。

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