余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「先輩さぁ」

ー生理中ってことは,エロい事出来ないね。

彼は最後に,少しだけ私を見た。

どんっと何かが破裂するような音が心臓でする。

響き渡るような羞恥が,私の顔を染めた。



「なに,いって」

「だから,えっ……」

「だっっれ,が!!」



言わせない。

絶対,言わせてなるものか。

今すぐ黙ってよ,佐藤くん。



「や,彼氏とか…」



あ,そういうこと……

私はまた別の意味で死にたくなる。

いや,やっぱり。

最後に流し目なんてして来た佐藤くんが悪い。

こっちは色々引きずってんのに。



『まい先輩』



その瞬間,ぼっと頬が火を吹いたかと思った。

隣の私を振り返った佐藤くんが,目を一杯に見開く。

ほっとれもんが,(ぬる)くさえ感じた。

それを書き消すように,おかしな誤解をした贖罪を示すように。

私は早口で,まるで一人言のように喋った。
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