余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「彼氏なんて……いないし。なんならいたことないし。大体なんでそんなこと言うの? 意味分かんない。佐藤くんのバカ。セクハラだし。いつか絶対こうか」

「いないって,いった?」



単調なその声に,何が含まれてるのかなんて分からない。

こちらを向いた佐藤くんの瞳も,何も映してはいない。

驚きなのか,動揺なのか,それとも何も思っていないのか。

彼は最初からそれを聞く為だけに新しく話題を振ったのかと思うくらい,真っ直ぐ言葉を私に向けていた。

次に,どこかぼんやりとして見えた私の顔を,佐藤くんがはっきりと映し出す。



「なにそのかお,反則。ってかなんで,なんで先輩もっと早くそれいってくんないの」

「なんっで,言わなくちゃなんないの。処…ょなんて,只でさえ恥ずかしいのに」



腕で顔を隠しても,隠しても。

面積が足りない。



「なんで」



その腕を取り払うように掴んで,佐藤くんは私を見た。

半ば泣きそうになりながら,私もそれを見上げる。



「私,もう27だよ?! ちゃんと知ってる? この歳でって,相当レアだから! タイミングだって…あったはずなのに……全部蹴ってきちゃって…」



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