余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
そう。

タイミングは,確かにあった。

中学から徐々に見え始めた,異性の好意。

でも,だけど。

付き合うとか全部全部分かんなくって。

どんなに格好いい男の子の話も全て蹴って。

だって,どんなに考えてもやっぱり分かんなかったし。

何より,彼らは皆私を分かってないみたいだったし。

そう悩んでいる間に,年齢を追う毎にその意味と難易度は分かりやすく上がっていって。

こんな訳の分からない生き物に私はなった。



「……いいじゃん,それで。そのままでいてよ,先輩」

「もうっ何なのさっきから!」 



いい加減にして!

そう上体ごと振り返った私はとても驚く。

佐藤くんにふわりと抱き締められたような,錯覚をしたから。

はっと息を引いたその一瞬が,5秒にも感じられた。



「せんぱい,言ったでしょ?」



忘れちゃったの? と彼は言う。



「なにが…!」



ヤケクソになって,彼を見もしずに答えれば



「先輩のこと,好きっていったじゃん」
< 18 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop