余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
静かに,丁寧に。
それでいて拗ねるように,彼はその言葉を口にした。
な…お,覚えて……?
私はおろおろとみっともなく狼狽える。
「だったらさー。先輩が実は誰のでも無いなんて,うれしーだけだし」
佐藤くんはニコリと目を細めた。
その笑みの正体を,私は絶対知りたくないと思う。
「そんなこと忘れちゃうなんてさー」
もう喋らないでと願った心。
是非とも世界中の女性に共感して欲しい。
そして,私は。
忘れて,ない!
「あれ? 先輩もしかして酔ってた?」
おちゃらけた様子でからかってくる彼を睨み付けて,私はざっと立ち上がる。
お陰様で,お腹はもう痛くもなんともない。
「酔ってたのは! あんたの方でしょーが!!!」
残り長くもない昼休憩に,私は食堂へとダッシュした。
意味分かんない,意味分かんない。
あれ,本気だったの?
そのままの意味じゃなくて,そういう…?
なんで? 佐藤くんなら他にもっと。
「はっ…はっ,は…」
恥ずかしいのか怒っているのか,もう自分の気持ちも定まらない。