余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
本当に失礼だな。

そう思いつつも,私は言い返せない。

周りのことも自分のことも



『真依は直球で言われなきゃ絶対に気付けないよね』



と散々友人に言われてきた過去がある。

苦笑いで返せば,2人が去った後の前方を見て,彼はポツリと言った。



「あんだけイケメンだと,女の人は直ぐ落ちちゃうかな」



あなたも変わらないですけどね。

私はぐっと言葉を飲み込む。

ずっと見ていたなら,流れ的に,イケメンは佐藤くん。

女の人は…



「木村さん?」



一ノ宮くんは視線だけ寄越して,はいと言った。

そうゆう真面目そうな声と顔,出来たんですね。

チャラいイメージしか無かったから,そのギャップにどうも追い付きづらい。



「あの2人,なんか妙に仲良くなっちゃって……桜島さん,あの2人,まじでお願いします」

「え」

「じゃ」

「ちょ,ちょっと…!」



一ノ宮くんはそれだけ言って,さっさと前を歩いて行ってしまった。

言い逃げだ,言い逃げ,だ!

態度とか,それ以前に,彼は。

自由すぎる!!!

絶叫しそうな私の心は,頭の中に溶けていった。
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