余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
落ちちゃうって,なに。

良い感じってこと?

佐藤くん,木村さんのこと狙ってるの?

お願いしますって,なに…。

呆然とするとか,そんなんじゃない。

ぐちゃまぜになった感情が,今にも口から溢れそうになる。

カサ…という袋の音が嫌になって力を込めると,クシャッとまた嫌な音がした。

その音は,胸の辺りから一向に上がってこない,私の言葉(こえ)に似ていた。

ふらふらと歩を進める。

周りには誰一人いない。

私は1人静かに外へ出た。

お昼,早く食べちゃわないと。

食べ損なうと,後がきつい。

とても大きな一人言のように,もわんもわんと思考する。

頭でだけわざわざ響いている感覚は,あまり好きではなかった。

まるで気落ちしているような,寂しさで一杯の静かな響き。

頭で完結するだけの,言葉。

そうしてお昼ごはんの心配ばかり流れるのに,どうもお腹は空いてはいないよう。

胸が締め付けられる様に詰まるのは……痛いのは。

どうしてかな。

そう思った途端に、

今度は頭じゃなく,胸の辺りで大きく響いた気がした。
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