余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「先輩?」

「待ってたの…? 佐藤くん」



彼は自販機の横で,壁に背を預けて立っていた。

真っ直ぐ私に好きだと言ったその場所で,あの温かい飲み物を持って。

『待ってたの?』 

って変なの。

待ってるんだろうなって,さっきまで思ってたのに。

頭を軽く下げて,私を上目に覗き込んでいる佐藤くんを,私もぽうっと見返した。

佐藤くんだ……



「どうかした?」



当たり前だけど。

佐藤くんが心配そうに眉を下げている。

どうしたんだろ。



「ううん,どうも。行こっか」



片手にほっとれもんを持って,嬉しそうに彼は身体を壁から起こした。

その飲んだことも無かった250mlが,あの日の出来事が嘘でないことを伝えている。
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