余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
『せんぱい,言ったでしょ?』

『あの2人,まじでお願いします』

『先輩のこと,好きっていったじゃん』



いきなりイケメンでモテる気安い後輩に好きだと言われて,その友達に後輩2人を勝手によろしくされて。

どっちなのか分からない。

佐藤くんが,分からない。

本当なら,本人の言葉が1番だって決めるはずなのに。

考えようとすればするほど,否定に揺れる。

かっこよくて,若くて,優しくて。

気付いたら私の側にいる,よくモテる彼。

そんな佐藤くんが私を?

そう思ってしまう。

何より私は,私自身に困惑してる。

可愛い後輩。

そのはずなのに。

紛れもなく佐藤くんが原因で,様々な感情が起こされるから。

とろとろして,どろどろして,ふわふわする。

今までなんとも無かったのに,今ではその今までを演じなきゃそういられない。

演じられても,いないけれど。



「今日の昼なに食べるの?」

「サラダ」

「だけ?」

「うん」



その小さく,だけど確かな変化は



「もっと食べなきゃ。さっきは死にそうな顔して,今は赤い……あ。先輩,今,何考えてた?」



にまんと笑う彼に,感じ取られてしまうほど。

私ってば,本当に……

どうしちゃったの!

隣の彼に,心が悲鳴をあげた。
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