余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
パカッと口が開く音がする。




「付き合ってるんですか??」




遠慮のえの字もなく訊ねられ,拭き終わった側から軽い紙コップを引っ掻けそうになった。

何とか口を手のひらで押さえ,二次被害を食い止める。

そして,手を拭いた。



「そんなんじゃないよ」



顔をそらすのもつかの間に,頬が赤らんでいく。



「あ,じゃあ告白されました?」



完全にペースを持っていかれて,私から目を離さない彼女は箸すらとうに置いていた。

そうだけど……

勝手に言っても,いいのかな。

目を合わせないまま,こくりと頷く。

心なしか,耳の上の方がじんじんと熱を持っているような気がした。

にやりと木村さんが口角を上げた気配がする。

でもそれも一瞬で,室温が1·2度下がったような気持ちになった。



「ぇ,でも……付き合ってないって……先輩,断っちゃったんですか……?」
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