余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
なんとか立ち上がった私は,あらゆるものを踏み分けて,佐藤くんを自分のベッドへ運ぶ。

ドサリ,とその衝撃が良くなかったのか



「ん…」



と佐藤くんが眉を寄せて身体をよじった。



「佐藤くん,佐藤くん……佐藤!」



ほっとした私は起きれるかなと声をかけて,中々起きない彼を高校のクラスメートみたいにして呼び捨てた。

彼がようやく薄目を開く。

それを覗き込むように前傾になったとき。

ふっ…と私を瞳に映した彼が綺麗に微笑んだ。

驚きかなんなのか,心臓がバクリとおかしな音を立てる。



「まい先輩,すき。めっちゃ好き」



あまりの幻聴に,私は瞳と口をパカリと開けた。

否,それは幻聴などではない。

それを知らしめるように,私の宙ぶらりんになった片手を,佐藤くんはゆるりと掴まえた。
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