余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
私,目が悪いんです。

いつもコンタクトで,あんまり分からないと思うんですけど……

身長も,靴でごまかしてはいるものの153㎝で。

ちょくちょく何かの邪魔になって,正直コンプレックスでした。

だけど,今はどちらも,少し良かったと思っています。

一ノ宮さんと初めてちゃんと言葉を交わした日,私はペッタンこのサンダルにジーパンなんかの,ラフな格好で出歩いていました。

何となく出掛けただけで,徒歩だったんですけど。

途中でお茶が飲みたくなって,自販機の近くに寄ったんです。

あと少しでたどり着く,そんな時にコンタクトがずれちゃって。

迷惑をかけるような人は周りに誰もいない。

取り敢えずお茶を買うことを優先させようと私は思いました。

だけど……

その自販機ったらいじわるで,少し高さのあるコンクリートの上に乗っていたんです。

需要の高いお茶は,そのくせ1番上。

許せませんよね。

かかとを上げればなんとか届く高さでした。

だけど。

視界は悪いわ,身体はぐらつくわ。

散々な思いで憤慨し,私は取り敢えず地味に痛むコンタクトを直そうと顔を伏せました。

その時,上からにゅっと,それはもうびっくりするくらいにゅっと腕が伸びてきて。

私は反射的に振り返ったんです。

正直本当に怖かった。
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