余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
色が滲んでるようにしか見えない中でも,骨格が男性であることは分かりました。

振り向いた拍子に,コンタクトはなおったみたいです。

ピって,私の気持ちにそぐわない軽快な音がなって。

でも私が1番驚いたのは,上から落ちてきた声。



『木村さん,大丈夫ですか?』



気の抜けるような,後輩のよく知る落ち着いた声。

一ノ宮さんです。

私の少しびくついた顔を見たからか,次の瞬間には少し焦っていました。



『あ……これじゃ,なかった?』



渡されたボトルを見て,すぐに助けてくれたのだと察しました。

珍しい表情。

明らかに困っていて,不安そうにしていました。

一ノ宮さんの行動への,私の態度を気にしていました。

そして,混乱した私はお礼を言うでもなく



『なんでいるんですか』



今となっては死にたくなる程恥ずかしんですが……

やり直したいと何度も思うくらい低く不機嫌な声で,そんなとんちんかんな事を聞いてしまったんです。
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