余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「ちがっ」

「赤くなっちゃって~」



無意味な抵抗むなしく,にやにやとからかわれる私。

なんだかこんな構図が増えたように思う。



「ちょっと! もう,年上をからかわ……」

「先輩?」



真後ろから声をかけられて,私はぴゃっと跳び跳ねた。

着地した時には,ひやりと汗が背中を伝う。



「珍しいね,先輩がこんなとこで騒いでるなん……て」



木村さんにすがるように寄った私が振り替えると,目を丸くした佐藤くんが見えた。



「出雲くんじゃん,お疲れ」

「お疲れ。ってかそんなんどうでもいいんだけど。何話してたの?」



私を背中に隠して木村さんが前に出る。

優しい……

木村さん,隠してくれるんだ。

今は顔を見られたくないって,分かってくれるから。

じーんの目頭が熱くなった。



「昨日ちょーっと仲良くなっちゃって? 先輩かぁわい~」



すんっと潤みを与えていた水分が引いていく。
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