余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
どこに連れて行く気なんだろ?

彼が私の手を掴む力は,そう強くない。

振り払おうと思えば,きっと簡単に出来るし,拒否するだけでも離してくれる気がする。

それでも,じっと見つめる手首に,佐藤くんの体温がじんわりと伝わって。

結局,私はなんのアクションも起こせなかった。

木村さん達と同じ様に廊下に出ると,何だか変な気分になる。

保育園児に,戻ったみたいな。

残業に厳しいうちの会社,いないと思うけど,今人に会えば誤解されるのは間違いない。

でも私は,離してとは言えなかった。

1つ角を曲がり,佐藤くんがそこにある部屋のドアを開ける。

ようやく制止しようと顔を上げると,その時にはもう。

私は部屋の中に引っ張り入れられていた。



「ちょっ……ここ,会議,しつ……!」


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