余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。

「私……きっと佐藤くんが思ってる様な人じゃないよ。ダメなとこ,一杯あるもん。いざ彼女にしたら,嫌になるよ」

「……なんなの先輩,さっきから。変に期待させる様なこと言わないでよ」



佐藤くんは熱い息を吐く。

そして制止するように手のひらを私に向けたまま,その甲をおでこに当てた。

彼の顔が,触れたくなる程赤く染まってる。

今なら,私を見ていない。



「だって,私。佐藤くんの事,好き」



二文字紡ごうとした時,何故か自分の唇の動きが遅くなった気がした。

代わりに,言い終えた後で心臓が急に動き出したかの様に早く鳴る。

言って……しまった。

羞恥で,きっと目の前の彼よりも頬が赤く火照った。

私は27,私は27!

無駄に(うぶ)い反応をする自分に言い聞かせ,手の甲で自分の頬を冷ます。

でも,この言葉使うの,初めてなんだもんな。

今更ながら,私はそう思った。

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