余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「先輩,ほんと?」

「私,嘘なんてつかない……」

「ん……ごめん。嬉し。……じゃあ,ちゃんと聞いたげる。先輩が思う,俺が嫌になるくらいダメなとこって,例えばどういうとこ?」




佐藤くんの声が優しいこと,やけに近く感じること。

それから,抱き締められるどきどき。

いざ問われると,何を言えばいいかわからなくなる。

何も言えないでいると,佐藤くんがくすりと笑った。



「俺,ずっと先輩に言いたかったことがある」



私は首を傾げて,もぞもぞと佐藤くんを見上げる。

佐藤くんは本当におかしそうに,片眉を上げて笑っていた。



「先輩,部屋,意外に汚いんだ」



何でそれをっ。

私は思ったけど,冷静になる。

そもそも彼をうちに招き(運び)入れたのは,他でもない私。

彼をベッドに運ぶ際,苦戦したのもまだ記憶に新しい。

私はじとりと彼を見て,言った。



「ずっと言いたかったことって……それ?」





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