余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
でも,そう言うとこ。

そう言うとこだ,佐藤くんに私が思い知っていて欲しいのは。



「……そうだよ。他所で取り繕っても,料理以外の家事が大嫌い。基本めんどくさがりやだし,冷蔵庫だって……食材はいつも賞味期限に追われてる……」



考えるだけで嫌になるあの数字。

効率悪いくせに,直ぐに使わない食材を買ってしまう。

むぅっと眉を寄せたら,また佐藤くんは笑っていた。



「俺は,もっと色んな先輩が知りたいです」



よくそんなセリフが思い浮かぶものだと,私は思う。

唇を尖らせたまま,照れに染まる顔を少し逸らした。



「……年上でも,経験無くても,いいんだよね?」

「うん」

「……大事にしてよ」

「もちろん,今よりずっと」



そこまでは,いいよ。

ふわりと笑う彼に思う。

彼は十分,私に優しい。

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