余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「彼女に,なってくれる?」

「……うん」



寧ろこちらこそなのに,私の返答はたった1つ。

それでも彼が嬉しそうに笑うから。

もう……

私も少し,目元を和らげた。



「先輩が嫌なことは,俺がやればいい。俺,家事得意」



ふふんと自慢げな雰囲気を感じとり,赤面する。

それって……まるで一緒に暮らすみたい……



「いずれ,ね。俺なんて本当はそれもすっとばして今すぐ結婚式したいくらい」

「……ぇ?! いやそれはちょっと……」



早すぎる。

つい先日,ようやく気持ちを受け入れたところ。

それでそれは気持ちが追い付かない。



「うん,大事にする」



約束したから。

佐藤くんはそう言った。

彼はいつもそう。

仕事だってそつなくこなし,いつだって余裕そう。

年上の私を前にして,余裕なのはいつだって彼の方。

なのに私と来たら,今この瞬間,空気も読まずこんなことを言ってしまう。



「……えりちゃん」

「え?」

「何で,木村さんのこと,そう呼ぶの?」


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