余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「先輩……きすしてもい?」
「よっよくない!」
いや,ダメって言うとまた違うけど。
今は……
「……恥ずかしい,から」
どうしたって照れが勝つ。
佐藤くんはなっが~いため息を落として,私の目蓋に唇を当てると,じゃれるように首筋に首を当ててくる。
私は少しだけ身をよじり,首をかたむけた。
「大丈夫。えりちゃんはただの俺と渡り合う先輩オタク。
それが共通して,本人からも頼まれて呼んでただけ。嫌なら木村さんって呼ぶし,特にこだわりない。先輩のが100倍大事」
ぎゅむぎゅむと扱われることに,全くなれない。
佐藤くんは気にならないの?
なんてちょっとムッとしたり。
「そっちの方が今さら……うちの社内じゃ特別みたい。だから,今のままでいい」
何でもないなら,やっぱりいいや。
そのかわり
「私を前みたいに,その……真依って呼んで」
「真依」
「そうだけどそうじゃなっ……ん,やっぱり,違うく無いこともないこともないこともない」
「じゃあいいんじゃん」
ほら,ちゃんとちゃっかり数えてる。
どうも悔しい。
いつか,きっと彼をあっと驚かせたい。