余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「俺,呼び捨てがいい」
「……出雲くん」
「せんぱーい」
「ずるいよ,出雲くん。…………出雲」
「ふっ,ずっとそう呼んで下さい」
「あの~せんぱーい?」
階段の上,2人してぱっと振り向いた。
突如挟まった高くて可愛らしい声。
そこには木村さんと一ノ宮くんがいる。
「出雲。2人のファンが阿鼻叫喚。桜ちゃん&出雲のペア推奨派が歓喜喝采。めっちゃうるせーし,響いて会話筒抜け」
「聞かせてるの,分かってるくせに」
「聞きたくね~よ」
「せーんぱいっ,私も絵莉花って呼んで下さいっ」
筒抜け……
出雲,分かってるって言った?
全部わざと……??
「もう! 暫く佐藤くんでいい! 出雲のばか」
「うぇ! 余計なこと言うなよ一ノ宮」
「へーへー。ってか会社ではさん付けろ」
「あの……桜ちゃんって何?」
「会社内での呼称です。知らなかったんですか? あ,さっきはつい。すみません」
皆言いたい事が多すぎて,ごちゃごちゃとする。
階段を封鎖するわけには行かないので,私達はじわじわと移動を始めた。