余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「わっ分かってるよ~。いつかお返しするんだからっ」

「はいはい。良かったね,先輩が頼りになる優しい人で。私は自分の分で精一杯なんだから」

「ねー!」



そんな会話も,それほど広くないオフィスではよく通った。

ついはは…と苦笑いになってしまう。

なんでも出来る訳じゃないんだけどなあ。

どうにも,自分に対する認識は,自分と周りの人間とではとても大きくズレているようだった。

今に始まった事でもないけど……

上からの日常的な無茶振り。

必死にやってギリギリなのに,周りの評価は上がるばっかりで。

木村さんの仕事を安請け合い出来るのも,ただ最初から想定して,自分の分を早めに処理しているだけに他ならない。

それもまた,経験あってこそ。

チラリと時計に目を向ける。

今行っている作業は,集中すれば20分もたたない内に終わる。

昼迄に木村さんの分をやるなら……

タンタンと,経験を踏まえて時間を配分していく。

そうしている内に,いつの間にか私の頭はクリアになって。

流れていく時に身を任せる様に,目の前の仕事だけになった。
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