壇上
揺るぎない正義が確かにここにあった。
全てが二極化して、私は片方に傾倒した。
それがいけなかったのだ。
それが私を私たらしめるようになってから、
世界は変わった。
目に入るもの耳に入るもの全て、
右か左かどちらか一方からしか得られなくなった。
世界は色を変えた。声を変えた。
白か黒かで描かれるようになった世界には、
1音の区切りで表されるようになった世界には、
芸術などは存在しなかった。
そこにあるのは常に現実で、
目を背けたくなるような惨状だった。
空想もない、現実だけが、この簡略化された世界を
唯一色付けてくれたものだった。
私は正しい。こちらで正しい。
現実だけに染め上げる世界が正しい。
人間は、ほぼ白とモスキート音にも似た音、
たったそれだけで構成されているのだ。
我々が死ぬ時に発する、「ピー」という音が
何なのかは未だに解明されていないが、
我々の殆どはただそれだけの事で説明がついている。
私は正しい。この、たったそれだけの世界が、
全て正しいのです。唯一の正義なのです。
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