Flower black ~Side Story~
「……あの場から助けてくれたんですよね。ありがとうございました」
「え、ああ、いや! なんかされてない?」
「大丈夫です」
「よかった!」
私がお辞儀をしてお礼を言うと、その人は無邪気に笑った。
「いつも帰りはこの時間なの?」
「はい。予備校に行ってるので……」
「その制服、一宮高だもんね! この時間まで予備校か……偉いなぁ」
「……ありがとうございます」
初対面なのに、この人は嫌な感じがしないな。
今までに何回も話しかけてくる男はいたけど、
大抵の男は私に下心を持っているから。
でもこの人にはまったくそんな感じはしなかった。